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完全犯罪 第4部 1ページ目

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8月5日

アクに戻りました。
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まどかに50数万円を渡した日から数日後。

あきから連絡があり予定通り水曜日に会うことになった。

これはゼンがちえと旅行でよしきの店に行った日の3ヶ月ほど前の話になる。


あき 「お待たせ」

いまや人気歌手となったあき。
人目を気にしているせいか深く帽子をかぶっている。

アク 「行こう」

アク達がいる場所は東京、港区。

あきが海の見える場所に行きたいということでそうなった。

昼間は二人でいろんなところを回った。

誰が見てもデート。
しかしアクはもうあきと会うこと、連絡を取ることを今日で一切やめるつもりでいた。



午後6時。

あきの住んでいるマンションのある世田谷の道を二人で歩いていた。

あき 「楽しかったね」

アク 「うん」

あき 「今度・・・・・・いつになるかわかんないけどまた遊びたいな」

アク 「そのことなんだけど」

アクは今まであきに合わせて話していたが思い切って切り出した。

あき 「何?」

アク 「俺さもうあきと会えないんだ」

あき 「え? なんで? もしかして彼女いるの?」

アク 「いや、彼女はいないんだけど。俺ホストやってるしさマスコミとかバレたらまずいでしょ?」

アクは適当な嘘をついた。

あき 「それなら大丈夫だよ。今日だって誰からもサイン求められなかったし気付かれてないって」

アク 「でも一度でもバレたらまずいって、今やっと人気が出てきたところなんでしょ?」

あき 「うん。まあそうなんだけど。実は私は別にやめてもいいって思ってるんだ」

アク 「辞めるの?」

あき 「当分続けるよ。あゆみは今の仕事本当に楽しそうにしてやってるしさ」

アク 「あいつ好きそうだもんね」

あき 「私は仕事とアクでどっち取るって聞かれたらアク取るよ」

アク 「は?・・・俺?」

あき 「うん。初めて東京に来たときもアクに会いたいっていつも思ってた」

アク 「え?・・・なんで俺なの? 俺よりカッコイイ奴たくさんいるよ」

あき 「いないよ。みんな表面上は優しくしてくれるけど」

アク ≪・・・ダメだ。断るんだ!≫

アクはあきの気持ちを聞いて一瞬迷ったが。

アク 「でももう会えないんだ。あきのためにも俺のためにももう会ってちゃだめんだ」

あき 「そんなこと一人で決めないでよ」

アク 「ホストとデートしてるなんて世間にバレたら一気に人気落ちるし俺も責任取れないよ」

あき 「でも、会いたい。ミッキーにもユージにも。またみんなでカラオケとか行きたいよ」

あきは悲しそうな顔になっていく。

アク 「今日本当はあきに別れを言うために来たんだ。ごめんな」

あき 「ううぅ・・・」

アク 「それに俺達もう愛知で別れたんだから。泣くなよ」

あき 「だって! 私アクのこと忘れられないんだもん」

アク 「ダメだ。忘れるんだ」

あき 「そんなことできないよ。 東京に来てからもずっと思ってたんだから」

アクは困った。ここまで自分のことを思っているなんて知らなかったから。

あきはしゃがんで泣き出した。


アク 「わかった。わかった。 そんなに俺のことが好きなら将来結婚しよう」

あき 「え?」

アク 「結婚してやるから一回俺と別れてくれ。な?」

あき 「どういうこと?」

アク 「理由は聞くなって。今からそうだな・・・・・・。10年後ぐらいか? あき達が売れなくなったら俺と結婚しよう」

あき 「結婚してくれるの?」

アク 「だからするって。するから今から10年間は俺のこと忘れてくれ」

あき 「それなんか矛盾してない?」

あきはちょっと笑った。

アク 「そうか? 俺は他に女作らないしそれでいいだろ?」

あき 「結婚かー。いいね!」

あきは嘘泣きだったのか。すぐに笑顔を取り戻した。

アク ≪・・・ま、10年もしたらあきも気が変わっているだろう≫

アク 「じゃあ家の前まで送るよ」

あき 「うんっ」

アクとあきはその日、初めて手を繋いで歩いた。

マンションの前に着いた。

アク 「じゃ、10年後。俺から必ず会いにいくから。それまで俺に一切連絡するなよ」

あき 「わかったよ。でも結婚は絶対だからね」

アク 「何度も言わすなよ。絶対だって」


アクがそう言うといきなりあきがアクの肩を両手で軽くつかみアクにキスをした。

アク 「おい。何してんだよ」

あき 「今日はありがとう」

そういってあきは走ってマンションへ入っていった。

アク 「こんなところでマスコミに写真でも撮られたらどうするつもりだったんだ・・・」

そんな心配をしつつもアクはけんたと住むマンションに帰っていった。




6月。

どうやらアクとあきのデートはマスコミにはバレてなかったようだ。



カネイチの経営するホストクラブでは月に25万円以上の売り上げを出 さないとクビという制度が最近できたためアクはユージとミッキーと3人でピカイチへ向かった。


仕事が終わり朝9時。


ユージ 「アクもう30万売り上げたの?」

アク  「おう。なんか今日俺、誕生日って適当に嘘ついたら80万のボトル頼んでくれた客がいて一発だった」

ミッキー「いいなー。俺なんて安いシャンパンばっかだったよー」

ユージ 「お前は客笑わせてるだけだしな」

ミッキー「それが俺の生きがいですから〜。でももう5万は売り上げだしたもんね。あと5日でクリアできる」

そんな話をしていると、

カネイチ「なー、早く後片付けしろよー。ちょっと話したいことあるんだ」

ユージ 「なんすかー?」

カネイチ「いいからはよ片づけしろー。ミッキーはゴミ捨てて来いー」


慣れた感じで後片付けを終わらせるとホストのメンバーはそれぞれ帰宅していった。

残ったのは犯罪をするメンバーのみ。

カネイチ「ジャジャーン!」

カネイチはもっていたバックから旅行雑誌を取り出した。

ユージ 「ジャジャーンってふるー」

カネイチ「うるせっ」

アク  「ところで何? 旅行?」

カネイチ「おう。(犯罪を)やるメンバーだけでいこうと思ってさ。団結も強くなるだろ?」

ミッキー「いやっほーー!!!」

カネイチ「ミッキーうるさい。置いてくぞ?」

ミッキー「ひぃ・・・ごめんなさい」

カネイチ「ダイスケといろいろ話してさ捕まるかもしれねーしパっと遊んでおこうって訳。どうだアク?」

アク  「うん。悪くない楽しそうだね」

カネイチ「じゃ決まりだな!」

アク  「でもどこいくの?」

カネイチ「個人的にはヨーロッパでサッカーとか見たいな」

アク  「サッカーねー・・・」

カネイチ「なんか不満か?」

アク  「いや、ヨーロッパ遠いなって思って」

ダイスケ「まあ俺は韓国とかでうまい焼肉食べるってのもありだと思うんだよな」

ユージ 「韓国かー。最近流行りだもんな。向こうでも日本人ばっかだったりして(笑)」

カネイチ「仕方ないな。みんなに連絡して聞いてみっか」



翌日。


午前10時。

仕事が終わりまたピカイチの店内で話していると次々とメンバーが集まってきた。


ミッキー「やっほー。まどかちゃーん」

まどか 「おはようございます。昨日はわざわざ家まで来てもらっちゃって」

ミッキー「いいよ、いいよ」

まどかは携帯がないためミッキーが一人で昨日まどかの家まで行き連絡しておいたのだ。

とーるはゴウのバイクの後ろに乗りやってきた。

ミサキは客としてピカイチでずっと飲んでいた。

しばらくするとけんたもやってきた。


カネイチ「よし、全員集まったな。眠いからとっとと話をつけよう」

けんた 「旅行でしょ? 俺達学生は学校あるから行けないよ」

カネイチ「大丈夫だって大学の夏休みって長いんだろ?8月にいけば」

けんた 「それならいいんですけど、フランスはやめて下さいね(笑)」

カネイチ「まあまあ、落ち着いてとりあえず、みんなどこがいいか教えてくれ」

ゴウ  「これって携帯で済んだ話じゃないのか?」

カネイチ「それでもいいんだけど、たまには集まるのもいいじゃん」

ゴウ  「確かになー。今日日曜日だし。いっかー」

カネイチ「で。みんなどこがいい?」

ミサキ 「ハワイー」

ゴウ  「イタリアでフェラーリ見るってのもいいなあ」

ユージ 「フェラーリなら日本でもみれるでしょ」

ゴウ  「そういうことじゃなくて、本場で」

アク  「それなんとなく分かるけど」

カネイチ「まどかはどこがいい?」

一瞬場が止まった。

まどか 「すいません・・・お金ないです・・・」

カネイチ「いやいや、金の心配するなって。どこがいい?」

まどか 「そうですね・・・だったらどっか自然がたくさんあるところへ行きたいです」

カネイチ「自然かー。綺麗な海とかもいいかもね!」

ミッキー「俺も海がいいーなー」

ユージ 「ミッキーは市民プールで我慢しとけってー(笑)」

ミッキー「プールかーいいかも」

カネイチ「いいのかよ・・・」


みんなバラバラに意見を言ってまとまりそうにない。


アク  「ってかみんなパスポートあるの? 俺はあるけど」

ユージ 「あ! 俺家に置きっぱなしだ」

ミッキー「あー俺もかも」

アク  「あ、俺もだ」

・・・・・・。

まどか 「私ないです。お金かかるんでしょ?」

アク  「一万だったかな」

まどか 「そうですか」


金の話をするたびに場の空気が下がる。

アク  「俺があげたあの金は?」

まどか 「もちろん。ありますよ。生活費に使ってます」

アク  「そっか。また金やるから。もう俺達の前で金の無い話はやめような」

まどか 「ええ?・・・」

アク  「俺達は仲間なんだよ。まどかが困ってたら助けるし逆に俺達が困ったら助けてくれよ。そういう友達とかいるのか?」

まどか 「友達ですか?」

アク  「おう、心の底から分かり合える友達で、困ったときには真っ先に助けてくれる人だよ」

まどかはしばらく考えて・・・

まどか 「・・・・・・いません」

携帯電話すら持っていないまどかにそこまで親しくなれる友達なんているはずもなかった。

アク  「俺達がそれなんだよ。な。だから金のことは安心していいよ」

まどか 「・・・・・・ありがとうございます」

まどかは下を向いて泣き出した。

アク  「泣くなってー」


ユージ 「じゃあさ、愛知に上手いラーメン屋あるからそこ行ってパスポート取ってから飛行機乗って海外旅行いこうよ」

ミッキー「おー! 神様の楽園かー。懐かしいなー」

カネイチ「神様の楽園? どっかで聞いたことあるなあ」

ダイスケ「あー。それ、ずっとまえ雑誌見てて上手そうって言ってたやつじゃね?」

カネイチ「あー。そうかも。悪魔ラーメンとかある?」

ミッキー「あるある」


アク  「じゃあ、決まりだなー。8月までにまどかはパスポート取っといてくれよ」

まどか 「分かりました」


それから話し合いの結果。

「最後の海外旅行になるかもしれないし後悔のないように」という一言で悔いのないようにと世界旅行ということになった。

期間は一ヶ月間の予定でハワイから行くことになり最後は韓国で焼肉を食って帰るということしか決まっていない。


そして8月。

まずアク達のパスポートを取りに

アク、ユージ、ミッキー、けんた、カネイチ、ダイスケ、ゴウ、ミサキ、まどかの9人は新幹線に乗り愛知に向かった。

とーるは一ヶ月も彼女のまいと離れることはできないといい続けたので置いていくことになった。

そのかわりとーるは一ヶ月の間でさらに仲間を探すと約束した。

ピカイチは一ヶ月間休むことになった。

ピカイチの玄関には

「一ヶ月間、男を磨いて出直します」と張り紙が張ってあった。


新幹線に乗ること2時間。愛知についた。


ミッキー「おー。久しぶりだなー。名古屋だー」 

ユージ 「名古屋なんてほとんど来たことないだろ?」

ミッキー「うん。3回ぐらい(笑)」


カネイチ「そんなことはどうでもいいんだけどさ、神様の楽園って名古屋じゃねーだろ?」

アク  「こっからあと30分ぐらいかかるのかな・・・」


ワイワイ、ガヤガヤ。
中学生の修学旅行かと思わせるようなテンションで移動する9人。

一人一つ大きなバックを肩から下げ移動する。

電車に乗り換えしばらくするとアク達の地元の駅についた。

アク 「マジ懐かしいな」

いろんな思い出が蘇って来る。



まどか「いいところですね」

ミサキ「そうだねー。遠くでは川もあって田んぼも広がってるね」

まどか「海外行くよりもここでいいかも」

ミッキー「えー?マジー? じゃ俺と将来・・・」

ダイスケ「そんな話はいいからとっととラーメン食おうぜ。腹減ったんだ」

カネイチ「そうだな。行こう」

ミッキー「・・・」


アクの案内で神様の楽園に向かった。

タクシーを乗ればすぐ着く距離だが歩いていけない距離じゃないので歩くことにした。

アク  「よしき元気かなー」



ユージとミッキーはみんなに昔話をしていた。

しばらくすると神様の楽園についた。

アク  「ここだよ」

ダイスケ「おお、ここか。それにしてもすっげー車だな」

アク  「ああ、ずっとこんな感じだよ」

ユージ 「あーここでバイトしてたときはそれなりに充実してたな」

ミッキー「店員も可愛いしね」


ラーメンを食べに来た客とは思えないバックを持ち歩き9人は店内に入った。


よしき 「らっしゃーい!!!」

ミッキー「やっほー」

よしき 「お? 珍しい奴が来たなー」

たまたま店内を歩いていたよしきと会った。

よしき 「は? お前らなんだその髪は?」

アク  「客に向かってお前らはないだろー」

よしき 「アハハ、そりゃそうだな。今ちょっと席埋まってるから待っといてな」


よしきの案内で長いすに座らされた9人。

ダイスケ「やべー、上手そうなニオイがプンプンする」

カネイチ「だなー。腹減ってきた」

店内にいる客が9人を珍しそうに見る。

それもそのはず。東京人、と一目で分かるような服装。

カネイチは自慢のスーツを着てサングラスだ。

時計は純金にダイヤモンドがぎっしり。
時計の針がまぶしくて見えないほどの時計だ。



雑談をすること10分後。

要約9人分の席が空いたのでアク達9人は席へ移動した。


アク 「あきのおばさんにおごってもらったことがあったっけな(笑)」

ユージ「あるある、俺とアクとけんたとあきとあきのおばさんの5人で食べたなー」

けんた「そうだったね。懐かしいね」

アク 「あと高校の合格祝いもしてもらったな」

ミッキー「だねー。あのときはよしきのおごりだったね」

ダイスケ「ちょっと待てお前ら、地元同士で盛り上がるのはいいけどみんなもわかる内容にしてくれよ(笑)」

アク 「ごめん、ごめん」



ゼン達が訪れたのはアク達が来た日の翌日のことだ。

みんなで楽しく食事をしていると、厨房で。

よしき 「こらぁあああ! あ? おまえおにぎりばっか作って食ってんじゃねえよ。とっとと麺ゆでんか!」


乱馬  「すいません。すいません」


ミッキー「俺達も勝手にラーメン作って食ってたとき起こられたっけ」

ユージ 「懐かしいなー」


アク  「ってあれ乱馬じゃね?(笑)」


ユージ 「あ!本当だ(笑)」

乱馬  「あー!お前らホストでもやってんのか?」

厨房から大きな声で聞いたきたがアク達はシカトした。





・・・。ラーメンを食べ終わりカネイチが会計を済ますと9人は外に出た。


ダイスケ「一本吸わせてくれ」

ダイスケとカネイチとゴウはタバコを吸い出した。

カネイチ「あー、あのラーメン最高だったな!悪魔ラーメン。韓国で焼肉食ったあとまた寄りたいぜー」

ゴウ  「あの辛いのがいいよな」

だんだんみんながそれぞれ打ち解けてきた。




アク  「じゃあ次はそれぞれ家に向かうか」

ミッキー「みんな俺んち見るのか・・・(汗)」

ユージ 「あー、おかん何してんのかな」

アク  「気にすんなって俺達は遠くで見とくよ」

ミサキ 「あたしアクの家みたいなー」

アク  「はいはい」

ミサキ 「冷たいー」


小学生の遠足のようなテンションでそれぞれパスポートを取りに家に向かった。



しばらく歩くと9人はけんたの家の前に着いた。

アク 「ここけんたの家・・・・・だったね」

ユージ「あはは、さすがに全焼。跡形もねーな。けんたはパスポートあるんだろ?」

一応燃えた柱などはすべて撤去されている。


けんた「パスポートはあるよ。 お! まだ倉庫残ってるなぁ。ちょっと待ってて」

けんたは一人倉庫に走ると地下室へ入れるようにするためのスイッチを押した。

「ガガガガ」

アク達が住んでいたときよりも鈍い音がした。

アク 「使わないとこうなっちまうのか」

けんた「さー。まあ中行こう」

けんたの案内で地下室へ入っていく9人。

カネイチ「おー。ちょっと涼しいな」

けんた 「ワインのためにちょっと温度下げてあるんだ」

ダイスケ「ワインか・・・」


けんたの家は全焼したものの地下室は無事だった。

アク  「けんたーそういや、地下2階があるんだっけ?」

けんた 「あるらしいけど。まだ教えてもらってないよ。なんか国宝級のものがあるって言ってた」

アク  「国宝級かあ」

まどかはただすごいと思って周りを観察しているだけだった。

ユージ 「そういや、なんで俺達を地下室に案内したんだよ?」

けんた 「ああ、今から旅行行くんだしさワインでも持って行けばいいかなって思って」

それまでただ黙っていたゴウが。

ゴウ  「おおおーけんた君、心が広いー」

アク  「っていうかすでに2本持ってるし」

ゴウ  「ば、ばれた?」

けんた 「えーっといいよ。適当に持って行って親父は当分日本には帰ってこないから」


一同  「いやっほー!」

とミッキーを始めみんな騒ぎ出した。


それぞれ持っているバックに入るだけワインをつめた。

みんなが思い思いにバックにワインをつめている中けんたは一人地下にあるパソコンをさわりはじめた。

「カタカタカタ・・・」

それに気付いたアク。

アク 「どうした? 彼女にメールか?(笑)」

けんた「あー、彼女とはもう別れたよ。それより向こう(フランス)にいたときにさ自称マフィアと知り合ったんだよ」

アク 「自称マフィア?」

けんた「話してなかったっけ? 実はそれが彼女と別れた原因なんだけどね」

ダイスケ「待てそれなんか面白そうな話だな。もっとゆっくりできる場所で話してくれよ」

アク 「それもそうだな・・・」

けんた「え・・・やっぱ話すんだ」

けんたはパソコンからその自称マフィアのメールアドレスを携帯に記憶させた。


けんた「よし。よかった。(東京の家を)出るとき携帯に保存しとくの忘れてたんだ。これであっちに行ったとき会えるかも」

ゴウ 「え? マフィアと会うの?」

けんた「マフィアって言ってもどこまで本当か分からないよ。見た目はそうだったけどね」

アク 「マフィア、上等じゃん。仲間にしたら完全犯罪も楽に進むかもな」

カネイチ「・・・それはかなりリスク高いと思うけどな」

ダイスケ「俺も。仮に本当にマフィアだとして実際仲間にできるかどうかも」

アク  「まあ顔見ればだいたい使えるか使えないかぐらい判断できるさ」

けんた 「きっと使えると思うよ。彼女と分かれたとき何かあったら協力するて言ってたし」

ユージ 「マフィアの言うことなんて信じられないって」

ミサキ 「あんたら本気で言ってんの? ありえなくない?」

アク  「いまさら? 全然ありえるって(笑)」


アクの心は久しぶりに高鳴った。


アク  「よし、なんか単に旅行じゃなくて同時に仲間を集めれそうだな。いい感じだ」

ユージ 「じゃあそろそろ行こっか。今度はミッキー宅だな」

ミッキー「俺んち、キターーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」


アク  「じゃ行こっか」

そうしてけんたの家を出てミッキーの家の方角に歩いた。

アク  ≪実際、俺の家の方が近いけどまいっか≫

しばらくするとミッキーの家が見えてきた。


ユージ 「あの黄色い屋根の家がミッキーの家だよ」

ミサキ 「やだー、なんでミッキーの家だけ屋根黄色いのー」

ミッキー「知らないよー生まれたときからそうだったんだから。でも個性的でしょ」

アク  「まあそんなことはどうでもいいから。とっととパスポート取ってきてよ」

ミッキー「おっけー。じゃあみんなはこの辺で待っててね」


ミッキーは一人で自宅へ歩いていった。

ミッキー「親にバレるとめんどうだからなあ」

ミッキーはなれたように家の壁をよじ登って2階のベランダへ上がった。


そしてベランダからカギの掛かってない窓を開き部屋に入った。

ミッキー「泥棒気分♪」

ミッキーは2階にある自分の部屋に入った。

古い漫画の単行本が散乱していて扇風機の隣にはストーブが。

小さいテレビには初代ファミコンがいつでもできるようにセットされている。

勉強机は物置かのように机という役割を果たしていなかった。

ミッキー「ホコリがかぶってるだけで全然変わってないな」


ミッキーは昔エジプトに行こうとしたときに使ったパスポートをタンスの一番上の引き出しから出した。

ミッキー「あった、あった!」

ミッキーはそのまま出てきても良かったのだがせっかく家に帰ったので置手紙して行くことにした。

ミッキー「子供は預かった。って書いてもいいんだけどもうそんなボケ通じないか」

ミッキーは古いカレンダーを1枚破りその裏に部屋に落ちていたマジックで大きく

『いきなり出て行ってゴメンネ。必ず帰ってくるから単行本だけは売らないで』

と大きく書き部屋のドアを開け廊下に投げた。

そしてミッキーは2階からベランダを通り上った道から降りてきた。




ミッキー 「ただいまー」

アク   「遅いじゃん」

ミッキー 「ちょっと、昔を思い出してたごめん」

アク   「パスポートあった?」

ミッキー 「あったあった」

ミッキーはアクにパスポートを見せた。

アク   「よし! じゃあ次ユージの家か」

ユージ  「俺んちかー。どうなってるかなー」


9人はユージの家の方に歩いていった。


ユージ 「あそこの3階だよ」

ユージが指差したのは古いマンション。

マンションは1つではなく複数連なっている。

マンションとマンションの間には小さな公園がありコンビニも見える距離にある。

カネイチ「なんかすげーな」

ユージ 「うち親、離婚してってからビンボーなんだ。兄貴は荒れるし大変だったよ」

ミッキーと同じようにユージ以外の8人を置いてユージは久しぶりに自宅へ帰っていった。

階段が外についているのでアク達にもユージが上っていくのが見える。

そんなとき待っている8人の横の道路を中学生と思われる不良が原付で二人乗りして通っていった。

ダイスケ「治安悪いな・・・・・・」

アク  「俺昔、歩いてたら黒人にいきなり殴られたことあるよ」

カネイチ「嘘だー? ありえないって」

けんた 「あー昔言ってたかも」

アク  「本当だって」




一方ユージは。

ユージ 「あー開いてないか、当然だよな」

ユージは仕方なくインターフォンを鳴らした。

ユージ 「宅配便ですー」

・・・

ユージ 「反応ないな・・・誰もいないのか。仕方ないな」

そういうとユージは隣の家のインターフョンを鳴らした。


おばさん「お? ゆーくん、どうしたの?」

ユージ 「まだうちのカギ持ってる?」

おばさん「あるわよ。それにしても帰ってきたの久しぶりじゃない?」

ユージ 「あーはい」

ユージの母親はカギやサイフを落とすことが良くあったので隣の仲の良いおばさんに合鍵を渡していたのだ。

おばさん「はい。これカギね。お茶でも飲んでく?」

ユージ 「あーいいよ。また今度で、急いでるからちょっと待ってて」

ユージはそういって自宅の玄関を開けると急いで自分の部屋へ行きパスポートを取って家を出た。

そしてカギをするとおばさんにカギを渡した。

ユージ 「ありがと。またね、おばさん!」

おばさん「いってらっしゃい」



ユージは走ってアク達の元へ戻った。

ミッキー「おっかー」

ユージ 「あせったよー、家に誰もいないんだもん」

アク  「でもあったんでしょ?」

ユージ 「うん、ちゃんと持ってきたよ」

ユージはパスポートをみんなに見せた。

アク  「よし、じゃあ最後は俺ん家かー」

ミサキ 「おー」


9人はアクの家に向かった。


アク  「あそこが俺ん家だよ」

カネイチ「フツーだな」

アク  「ああ、地下室もなければ屋根も普通の色だ」

ミサキ 「柴犬飼ってそー」

アク  「いねーって。じゃあみんなこの辺で待ってて」


アクは一人で家に向かった。

アク   「こんな普通の家で一生暮らしてられっかよ」

アクは普通のことが一番嫌いだった。

人と違ったこと。今まで誰もやったことがないことにすごく興味がある。


アクは特に親とケンカして家を出たわけではなかったので正面から家に入った。

アク  「ただいま」

アク母 「はあーい」

アクの母親が普段客人が来たときに出す声を発した。

アク  「俺だよ」

アク母 「あら、どうしたの一人?」

アク  「うん。ちょっと忘れ物」

アク母 「今どこで何してるの?」

アク  「えーっと・・・、別に人に迷惑かけるようなことしてねーから許して」

アク母 「ならいいけど」

アク  ≪いいのかよ・・・≫

アクは自分の部屋へ行った。

昔、嫌なことがあったとき自分の部屋の壁を殴って凹ませた箇所がまだ昔のカレンダーで隠れている。

アク  「まだバレて無さそうだな(笑)」

六畳半のアクの部屋。

中学卒業以来けんたの家に住んでいたのでアクの部屋はまだ中学生っぽい部屋だった。

アク  「なんだこれ?」

机の上には中学校の卒業式にあきと二人で撮った写真があった。

アク  「あきが現像したのを俺の親に渡したってとこか」

二人とも良い顔で笑っている。

アク  「若けーな」


30秒ほどその写真を見るとそっと机の引き出しに大事そうにしまった。


アク  「よし、パスポートも取ったし行くか」

アクは玄関へ向かった。

アク母 「また行くの?」

アク  「さっき言っただろ。忘れ物取りに来ただけだって」

アク母 「そうだったわね。まあ母さんはアクが楽しければそれでいいの」

アク  「大丈夫だってまたそのうちひょっこり帰ってくるから」

アク母 「正月に戻ってきたらお年玉あげるわよ?」

アク  「俺が金で連れないのは昔から知ってるだろ」

アク母 「あはは。そうだったわね。じゃあまた元気でね」

アク  「行ってくる」

アクの母親は昔からアクに何か習い事をさせておきたいと思っていたがアクはいつも断っていた。

「近所のあの子もやってるから」という母親の言葉が嫌いだった。

好きなゲームを買ってあげるとか、5000円あげるとかそういうのでアクは心が揺れたことはなかった。


アクは家を後にしみんなの元へ戻った。

ユージ 「おかえり」

アク  「ただいまって、さっき家に入ったときも言っちゃったよ」

ユージ 「そりゃそうでしょ(笑)」



こうして全員のパスポートが揃った。

9人は最寄の駅から空港へ直行しているバスに乗り空港へ向かった。

バスに揺られながらたわいも無い話をしていると空港に着いた。


カネイチ「もう午後9時か」


ダイスケ「アメリカ行きは、いいんだけどさアメリカのどこ行くんだ?」

アク  「どこだろ。俺はベガス行きたいな」

ユージ 「ベガスいいねー」

ミッキー「やっほー。カジノ、カジノ」

カネイチ「おいおい、いきなりそんなとこ行ったら金使っちゃいそうだろ」

アク  「あといくらあるんだよ?」

カネイチ「手持ちは350万・・・9人でアメリカだろいくらかかんだ」

ダイスケ「どうだろな。一人15,6万じゃねえか?」

カネイチ「よし、ミッキーは俺のバックの中入れ。節約だ」

ミッキー「いやっほー!・・・? って無理無理、トイレ行きたくなったらどうすんの」

カネイチ「そういう問題かよ」

けんた 「15万×9人で135万か」

カネイチ「そりゃ金はあるんだけどな」

アク  「まーそれはとりあえず置いといて今日出発できるかどうかだ」

そういうとダイスケは通りかかったスチュワーデスに聞いた。


ダイスケ「カルフォルニア行きは13時ですだって」

アク  「じゃあ今日は泊りだな」

カネイチ「そっかー。仕方ないな確かここの空港温泉あるんだよな?」

ユージ 「あーあるらしいよ」

カネイチ「金の心配はなしで初日から豪華にいこーぜ!」

けんた ≪・・・まだ日本から出発できてないのにな≫


空港内にあるホテル並の部屋を2つ借りた。

男と女で別れて宿泊。

温泉に入り真っ暗な海を眺めて過ごした。


翌日。
午後1時、飛行機に乗り込みカルフォルニアに向かった。


ダイスケ「なあ、けんた。あのマフィアの話そろそろ聞かせてくれよ」

けんた 「いいけど、こんなとこで話したら周りの乗客に聞かれちゃうよ」

ダイスケ「それもそうだな。また今度でいいや」

けんた 「近いうちにみんなの前で話すよ」


9人がそれぞれぐっすり寝ていたらいつの間にかカルフォルニアへ着いていた。

カネイチ「おい。アク起きろ。着いたぞ」

アク  「お? 本当?」

カネイチ「嘘ついてどうすんだよ。行くぞ」


アク達は飛行機から降りた。

アク  「おい。ここってカルフォルニアのどこだ?」

ダイスケ「ベガスだろ? もうここはラスベガスだ」

アク  「おぉお」

名古屋から飛行機に乗ってから11時間が経過していた。

日本時間0時。アメリカ時間朝7時。

太陽の光がまぶしい。

ぐっすり寝ていたアク達はみな元気だった。

ミッキー「おーし! ベガス、ベガス!」

ダイスケ「待て待て、とりあえずホテルを探さないと」

カネイチ「そうだな。足元固めてから移動しよう」

アク  「そうだな。女もいるし」

ミサキ 「気ー使ってもらってありがと」

アク  「まどかのためだよ」

ミサキ 「・・・」

アク  「冗談だって。あはは」

アクは機嫌が良かった。

入国手続きを終えた9人は空港から外に出た。


タクシーの運転手達がアク達を見る。

それに気付いたカネイチが。

カネイチ「海外は盗難とか多いから自分の荷物ぐらいは自分で守れよ」

ミッキー「はぁーい♪」

適当に返事をしたミッキー。

カネイチ「お前が一番危険なんだよ(笑)」

ユージ 「大丈夫。俺が後ろから見張っとくから」


人を見れば盗人と思えとはまさにこのことなんだろう。
カネイチの一言で今いる場所が安全といわれる日本ではないということを実感した。

日常会話以上の英語を話せるのはけんたしか居ないがカネイチもダイスケもミサキも日常会話ぐらいの英会話はすることができる。

ちなみにアク、ユージ、ミッキー、ゴウは中学生レベルだ。

ユージに限っては中1で習うbe動詞すら危うい。

アクは単語はなんとなくわかるが文章になるとお手上げ。

ミッキーは簡単な文章ならなんとか理解することができる程度だ。




けんたの外人か?と思わせる素晴らしい発音を聞かされながらけんたを中心に安いホテルにまでたどり着くことが出来た。


けんた 「やっぱどこの国でもタクシー運転手は物知りだなー」

ダイスケ「そりゃそうだろ。毎日この当たりの道走ってんだから」

けんた 「ですよね」

アク  「それにしてもベガスにもこんな安そうなホテルあるんだな」

ユージ 「ギャンブルで負けた奴が泊まるところじゃない?」

アク  「そっか(笑)」



男女に分けるために部屋を二つ借りた。

二人用の部屋に男7人・・・・・・。

サイフなどの貴重品だけは身につけ荷物を置いて一度全員が男部屋に集まった。


ダイスケ「ちょっと話があるんだけど」

ダイスケがみんなを呼び寄せた。

ユージ 「どうした?」


ダイスケ「俺が大学生やってたときギャンブル好きの友達が言ってたカジノの必勝法をみんなでやろうと思うんだ」

ユージ 「必勝法?!」

ダイスケ「俺の話を聞けばみんな必勝法だと思うよ。でもたぶんバレると怒られるだけじゃ済まないね。全部没収されるかも」

ゴウ  「で、どんなんだよ?」

まどかも真面目な顔でダイスケの顔を見た。

ミサキ 「でも、必勝法だったらみんなやってるって。そんなの無い無い」

ユージ 「まあ。ダイスケの話を聞いてからだ」

アクはベットに上がりむき出しのコンクリートの壁に背中を当ててじっとしてダイスケの話を聞こうとしている。

ダイスケ「まず、その方法はルーレットでやるんだけどな」

ダイスケは一人で話し始めた。


アク達を空港から追ってきている3人組などには待ったく気付かずに。



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