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完全犯罪 第6部 1ページ目

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ゴウ 「じゃ俺から話そうか」

ゴウが沈黙を破るように話始めた。誰も止めるものはいない。

ゴウ 「俺はまず道という道を調べた。車では通れないがバイクでは通れる場所。今ならどのタクシー運転手より詳しい自信がある」

アク 「おぉ。さすがだな。他には?」

ゴウ 「他には・・・・・・ってか、それ調べるのに結構時間かかってなそれ以外は特にないぜ・・・・・・」

アク 「そっか、まぁ半年だったらそんぐらいが限度ってところか。じゃ他誰か?」

けんた「じゃあ俺が・・・・・・」



それから話は深いところまで続きある程度のことはまとまっていった。


カネイチは、長野・軽井沢にある別荘を1年間借りる契約を結んでいた。

半径1キロ以内に他の別荘はなく静かな場所だそうで、落ち着いて物事を考えるには打って付けの場所らしい。


使う、使わないかは別として取り合えず借りておいたという。



ダイスケは得意のネットで噂を流していた。

今年中に101事件のような大きな事件が起きると情報を流しまくった。

掲示板では一人二役どころか7人ぐらいの名前を使って演じそれを見ていた大勢の人間は信じているらしい。

それに混じって俺たちも・・・・・・という輩もかなりいるとか、いないとか。


そして、ダイスケは他にもけんたと一緒に爆弾を作る準備をしていた。

まだ完成はしていないものの材料さえ集まれば数時間で完成できるところまでできている。


けんたはアンズとの話し合い中心でやるべきことは国会議事堂爆破。

そのために国会議事堂を警備している警備員にコンタクトを取って爆弾を仕掛けさせることができるところまで来ているらしい。

アメリカの同時多発テロの影響で最近はかなり警戒されていて警備員の数も昔と比べるとかなり増えているという。



ミッキーは何をしたらいいのか分からなかったため、けんたに相談すると、ヒデと二人で爆弾を設置できるような場所を探して 来て欲しいと頼まれたので東京にある大きなビルや人が良く集まりそうな道で爆弾を隠すことができる場所を探し回った。


ユージは暴れたあとのことを考えいかに自分達を分からなくするかを必死に考えていた。

とにかく全員のアリバイを確保するために試行錯誤を重ねていた。


アクは、東京にいる警察官、警備員や交番の場所、消防署の場所、最新のセキュリティなどを調べ 国会議事堂から仮に火が出れば何分後に消されるかなど予想を立てて犯行の順序を綿密に計算していた。



――。


アンズ 「ほう、半年でここまでやるとは凄いじゃないか。で、いつやるんだ?」

アク  「今5月だろ。10月1日と言いたいがその日は101事件の影響で犯罪防止週間とかいって警備が固いんだ。だからあえて1週間後、10月8日かその近辺がいいと思うんだ。 みんな犯罪防止週間直後で、疲れてるだろうしホッとしたところで俺たちが攻める。これだとあれから1年以内になるし丁度いいだろ」


アンズ 「そうか。10月8日か」

アク  「日曜日の深夜がいいと思うんだ。深夜0時とか」

アンズ 「その辺はお前たちに任せるよ。じゃあ10月8日の深夜0時で、俺もソイルのメンバーにいろいろ伝えないといけないからな、ここで決めたらもう変更はなしだぜ。台風でもやってもらうからな」

アク  「台風が来てくれたほうがある意味やりやすいかもな」

アンズ 「じゃあ、決まりだな」



いよいよ犯行の日付が決まった。


それからというもの、『マジでやるんだ』という気持ちがそれぞれのメンバーに心に生まれ今まで半分架空の話のような気持ちでいたが本気だということを実感していた。


アンズは日本各地に散らばっているソイルメンバーのリーダー達を東京に集め10月8日の深夜に動くと説明した。



そして、着々と準備は進められていった・・・・・・。




6月。


あきのいる病院。

ユージ 「なぁアク、仮に100億円やるから犯罪するのやめろって言われたらどうする?」

アク  「ん? んー・・・・・・100億かー。・・・・・・6:4で辞めないかな」

ユージ 「やっぱやるんだ? 1000億だったら?」

アク  「金の問題じゃないんだ。やると決めたらやる!それに今更引けないしさ」

ユージ 「そういえばアクは昔から金にあまり執着してなかったよな」

アク  「そりゃそうでしょ。結局金は人間が作った道具なんだし。それによって目標を見失うのは間違いだって」

ユージ 「あはは、そっかそっか。でも俺貧乏な家で育ったから金の大事さって分かるんだよね」

アク  「ん?」

ユージ 「金が無かったら生きていけないしさ。家だってボロボロ。欲しいものだって金がなけりゃ買えないし、それで軽くイジメられたりするんだって」

アク  「ああ、もちろん最低限の生活費ぐらいはいるよ。そんな極論の話?」

ユージ 「いや、ごめん、ごめん。そうじゃないんだけど、ちょっと聞いてみたかっただけなんだ」

アク  「そっか」


あきは目覚めない。

植物状態になって5年近く経過した今、医者からはもう一生目覚めない確率の方が断然多いと言われている。

しかし、アクは必ず目覚めると信じ暇があれば見舞いに来ていた。

アクはあきのことがそれほど好きではなかったはずなのだが、植物状態になってからは逆にアクの方があきを愛しく感じているとユージは思っていた。


計画の方も着々と進められ昔、なべから奪った拳銃や世界旅行で買ってきた靴をいつでも使える場所に隠してある。


そして、最近は『女装でもするか?』という案が出てきている。

もちろん見られたときのためでもあるが、髪の毛が落ちないようにするという目的もある。

これはDNA鑑定などを視野に入れている。


考えられるだけのことを1つずつ徹底的に確認し、ミスが出ないようにする。

その行動そのものもアク達は楽しんでいた。

そのためアク達はだんだんと犯罪について詳しくなってきていた。






――。


警察庁。

ゼンはエリートでありながら渋谷の派出所で1年間仕事をしていた。

それは父親が一度現場を経験しておいたほうがあとから必ず役立つと言われたものそうだし、ゼン自身も現場を見ておきたいというのがあったからだ。

そして、1年が過ぎゼンは現場での仕事の大変さなどを良く知った上で警察庁で仕事をすることになった。


6月某日。


上司 「なぁ、ゼン。この仕事楽しいか?」

ゼン 「楽しいとは言えませんが、やりがいがあります」

上司 「そっか、俺もう15年間ここにいるんだけど、お前みたいな真面目なやつ初めてだぞ」

ゼン 「え? そうなんですか?」

上司 「あぁ、みんな警察と言っても人間だからな。そりゃ表向きはみんな真面目そうな顔してるけど、一たん仕事から離れるとみんなグタグタだ」

ゼン 「確かに、どこかで生き抜きしないと持ちませんし」

上司 「でも、お前はすごいよ。俺がそういうんだから間違いない!」

ゼン 「ありがとうございます、1件でも犯罪が減るように頑張ります」


警察にはいろいろな人がいる。


指紋の鬼と呼ばれている人や、聞き込みの達人。

取調べの鬼や、白バイの神など、さまざまでそう呼ばれている人はその仕事以外はほとんどしない状態にあった。

そして、だいたいそう呼ばれいる人は若くない。



帰宅時。

ゼン  「はー。今日も疲れたなあ。ゆき君元気にしてるかなぁ」



――。

ゆき自宅。

ゆき  「はい。はい。わかりました」

電話を切ったゆき。

ゆき  「やっと仕事が来たー!」

ゆきは喜びのあまり椅子から両手を上げたまま床に転げ落ちてしまった。

個人事務所(自宅)を構えてから3度目の仕事がようやく入ったのだ。

学生時代はゼンと二人でやっていたのでゼンの力が大きくどんどん解決していたが、一人でやってみるとあまり上手く行かなかった。

前回の依頼では大ミスをしてしまい信用を落とし、それからというもの仕事の無い日々が続いていた。


親からは冗談交じりでニート扱いされ笑えない状態であった。

ゆき 「浮気調査、浮気調査。証拠写真を撮って渡せばほぼ解決だな」

ゆきは道具だけは揃えていたので必要な持ち物を持ち家から飛び出ていった。



ゆき ≪ゼン君見ててよ。この仕事をきっかけに一人でもすぐ有名になるんだから!≫


ゆきの甘い考えはすぐに改めさせられた・・・・・・。



一方愛華知恵は弁護士の仕事を順調に覚えていた。

ゼンとの繋がりはあるようでないような感じだった。

お互い忙しく会うことがほとんど出来ていなかったがお互いがお互いを信じあえる中だったので別れるということは無かった。



――。

ゼンの職場ではいつも怒っている上司がいる。

名前は山梨。

山梨は毎朝のニュースを見ては仕事にやってくる。

小学生が人を殺したとか、高校生が親を殺したとか、母親が赤ちゃんを虐待したなど卑劣な犯罪が起こるたびにゼン達後輩に怒っているのだ。

ゼンも毎朝、朝食を取りながらラジオを聞いているのでそんなニュースがある度に山梨が怒ると予想はつくのだがどうすることもできなかった。


ある日。

山梨がゼンに話しかけてきた。

山梨 「なぜ、最近の若者は卑劣なことをするんだろうな」

ゼン 「まずその両親に問題があると思います」

山梨 「どこで読んだ情報だ? お前は教科書か」

ゼン 「・・・・・・」


山梨は機嫌が悪いと誰に対しても悪口を言うことがある。

ゼンは社会人の厳しさを肌で感じていた。



――。


7月。


全世界のマフィア達が日本に注目していた。

アンズが日本にいるSOILの仲間にアク達が起こす犯罪の日程を教えた後にその情報がどこからか漏れあっという間に世界中のマフィアに知れ渡ったのだ。

 <悪魔の子がやるらしいぞ>
 

       <え? あいつってSOILやめたんじゃないのか?>

<AASSのボス殺したものあいつだったよな?>

   <知らねーよ。とにかく上手そうな話だから乗ってみるか?>


<暇だし、行くか? 人生で一回ぐらい国を潰してみたかったんだよな>


麻薬中毒者や人殺しをなんとも思わない連中が日本に注目している。


『10月8日、何かすごいことが日本で起こるらしい』というマフィアの噂は日本の警察もキャッチするのは容易だった。



ただ、そんな情報が世界中に飛び交っているとは知らないのはアク達本人。

頭の中では『成功率を1%でもあげるには』を考えながらあきのいる病室へ。

アクも万が一捕まるかもしれないと思っているのか、あきを見舞いにくる頻度が多くなっていた。


最近のけんたは家で新しくプログラムを作っているらしい。

人を不幸にするプログラムを。




――。


7月のある日。

いつの間にか、けんたの家(六本木ヒルズ)に住みついているアクは12時ごろ目を覚ました。

けんたにあきの病院へ行ってくるというとアクは一人で病院に向かった。


アクは現在けんたのヒモ状態だった・・・・・・。

病室に着くといつものようにユージがいた。

アクがあきに近づきユージと雑談をしていると花瓶を持ったミッキーが病室に戻ってきた。

ミッキー 「やっほー。今日も寒いねえ」

アク   「って今、7月だぞ」

ユージ  「お前上半身裸じゃねーか」

ミッキー 「ああ、ちょっと熱かったから水遊びしてて・・・・・・」

ユージ  「病院に迷惑かけるなって」

アク   「あはは」

3人でたわいも無い会話をしていた。


何かいつもとは違う雰囲気。

アクは何か違和感を感じていた。


アク   「なんか今日いつもと違う気がするんだけど?」

ユージ  「えー? 何が?」

アク   「分からない。何かがおかしい」

ミッキー 「まぁまぁ、えびせんでも食う?」

アク   「どっから持ってきたんだよ」

ミッキー 「来るときコンビニで買ってきたんだ」


そんなときだった。

それは、アクだけが見た。






あきの左手の小指がかすかに動いた。


アク  「え? お、おい! 今あきの指が少し動いたぞ?!」

ユージ 「マジ?」

ミッキー「復活?」


アクはイスから立ち上がりあきに近づき軽く肩を叩いた。

アク  「おい、あき、しっかりしろ!」

あき  「・・・・・・」


ユージ 「見間違いじゃないか?」

アク  「おい! あき!」

あき  「・・・・・・」


アク  「くそっ。絶対動いたのに」


・・・・・・。場に重い空気が流れる。

ユージ 「もし、復活なら自分から起きるでしょ、慌てる必要ないよ」

アク  「そうだな。悪い。取り乱した」

ミッキー「絶対復活するって! 全国にファンもいるし」


確かにそうだった。あきにはまだファンレターというか応援の手紙が毎日届いている。

中にはあき達が出したCDを聞いて生きる希望ができたという人も少なくなかった。


一方姫野あゆみの方は順調で歌手としてだけではなく、ドラマやCM、雑誌などで今だ幅広く活躍していた。



アク  「俺達はもう23だ。あきが今目覚めたとしたら、あき自身はまだ18だと思っているからそのギャップで苦しむだろうなぁ」

アクは少し悲しそうな声でそういった。

ユージ 「確かになぁ。18〜22,3といったら人生で一番面白い時期かもしれないし、それが無いあきは相当悲しいと思う」

アク  「はー。やべぇ。昔の事件を思い出しちゃった。腹立ってきた」

アクはあきが植物状態になった事件を思い出していた。



あきの指は確かに動いていた。アクの見間違いではない。

ただ、今のあきはそれが精一杯だった。

今のあきに意識はない。ただ生きようとする気持ちがあきの指を動かしたのだった。



8月。




警察は、『世界のマフィア達が日本にて10月8日の深夜に何かをする』という情報を掴んでいるが、それ以上の情報が入ってこない状態が続いていた。

『何かをする』とは何なのか?

テロなのか?

天皇でも誘拐するのか?

テレビ局でも襲って電波ジャックでもするのか?

ハイジャックか?


とにかく10月8日という日を重く考えている警察の上層部達。

テレビやネットを使って国民に伝えるのはありえなかった。

まだ本当に確実ではない。デマかもしれない。

そんな情報を流せば混乱するだけだと考えていた。

警察の中でもそれを知っているのは上層部と情報通信局の関係者の一部だった。

もちろんゼンはまだ知らない。



しかし、アメリカやヨーロッパ各国から日本の警察へ10月8日が狙われているという情報が入ってきていた。

8月の後半になり、やっと腰の重かった警察も10月8日の安全のための捜査本部を設置した。


『何かあってからでは遅い』という考えだった。


人数も少なく、一般には公表されていないチームが組まれた。


その中になぜか”ゼン”が選ばれていた。


50代のおじさんより20代の若い人間の方がパソコンに詳しく情報に敏感だということと、 普段の真面目さや人一倍の正義感、ゼンの父親の息子でしかも東大卒という肩書きがそうさせた。

ゼンはデータの詰まった書類に目を通す日々やいつも機嫌の悪い上司がいないところで仕事ができるということで少し喜んでいた。


そして、ゼンが上司に教えられた部屋へ行くとそこには最新のパソコンが並び、壁際には本が並んでいない本棚が目に付いた。

ゼン ≪これからここで何をすればいいんだろう≫

ゼンはまだ知らなかった。

自分が10月8日の何かのために集まった一人だということを。


ゼンが部屋の奥へ行くと窓際のパソコンを使って何か調べものをしている女性がいた。

ゼン 「こんにちは、初めまして」

ゼンは軽く頭を下げた。


女  「初めまして、もしかしてゼン君?」


話してみるとその女の名前は、みどり。

年齢は29歳でガチガチのエリート。両親は日本人。

アメリカ、ハーバード大学卒業で、3年前まで海外で犯罪心理学の研究と同時に凶悪犯罪限定で一部捜査をしていた。

大学卒業後、毎日が犯罪の世界で生きてきたみどりはその生活がある日突然嫌になり日本に帰国。

拳銃が無い世界での生活と山々に囲まれた場所で半年ほど生活するも、やはり犯罪を黙って見過ごす訳にはいかないと上京。

警察庁になんなく入ることができ、今は警察庁で凶悪犯の心理を探ることと一部捜査をしている。

みどりは海外の生活で世界の警察と顔なじみだったので警察庁の人間もみどりを頼りにしている部分があった。


ゼン 「そうなんですか。本当に凄い人がいるもんですね」

みどり「かたくならないでよ。あなたのお父さんも凄い人だよ」

ゼン 「父さんを知っているんですか?」

みどり「ええ。世話になったわ」


実はゼンの父親とみどりは一緒に捜査することがよくあった。

今は、ゼンの父親はゼンのいる警察庁にはいない。

地方の警察署に出向きアドバイスをする役になっている。



そして、みどりはなぜゼンをここに呼んだのか伝えた。

また、他の人には内密にすることも厳重に注意した。


みどり「いいわね? 誰にも言ってはダメよ。混乱を招くだけだから」

ゼン 「はい。でもまだ決まったわけではないんですよね?」

みどり「99%何か起こるわ。世界各国から注意するようにと警告がきている」

ゼン 「そうなんですか」



ゼンは悲しい反面正直嬉しかった。

悲しい部分とは、10月8日に日本で犯罪が起きることで死傷者が出るかもしれないということ。

嬉しい部分とは、今まで書類に目を通すことや新人扱いされ特に必要 とされていない立場にいたから。そして、今、昔夢みていた世界にやっとこれたのだと思うことができたからだった。

ゼン 「僕、頑張ります」

みどり「期待しているわ」


ゼン 「あと、他には誰かいないんですか?」

みどり「え? あぁ。もうみんな散らばって捜査してるわよ。あと10人ぐらいいるわ」

ゼン 「そんなにいるんですか?」

みどり「4,5人でどうにかなるレベルならいいんだけどね」


12人のメンバーのうちみどりの立場は上から2番目。

もちろんみどりより年上の男がみどりの言うことを聞かなければいけない状態でもあるが、それが現実だった。

ゼンは当然一番下。

そして、これからゼンの忙しい日々が始まった。




9月――。


みどり 「そう。分かったわ」

みどりが電話を切った。

みどり 「ゼン君、ロボットカメラって知ってる?」

ゼン  「テレビ局が交通状況や災害を放送するための装置ですか?」

みどり 「そうよ。じゃあそれと監視カメラの違いって分かる?」

ゼン  「監視カメラは、商店街や住宅で使っている主に人を映すものですよね?」

みどり 「詳しいのね。じゃあそれが今全国に何台ぐらいあると思う?」

ゼン  「確か・・・・・・ロボットカメラが約400箇所、監視カメラが全国に約300箇所、2400台以上じゃないですか?」

みどり 「すごい。当ってるわ」

ゼン  「学生のころの記憶なので今はどうかわかりませんが」

みどり 「だいたいあってるわよ」


ゼン  「それがどうかしたんですか?」

みどり 「あぁ。今電話でね。一般に公開されていないロボットカメラと監視カメラの設置の許可が下りたのよ」

ゼン  「そうなんですか。それは良いですね」

みどり ≪今の時代、大犯罪なんて無理なのよ≫



――。


9月に入りアク達もそわそわしていた。


確実に時間は過ぎている。

ボーっとしてても、真面目に働いてても過ぎていく。


アク達はなべの部屋から盗んだ拳銃が本当に使えるのか人気の無い場所で試し打ちをしたり、 世界旅行で買ってきた靴のサイズが合うのか確かめたり、足跡が分からないようにするために無い傷を付けたりして着実に準備を進めていた。


アク 「今更言うのはなんだけど、人は殺すなよ」


久しぶりにピカイチに集合したメンバー。


アク 「この前拳銃の試し打ちしたけど、使うときは無いと思うし。ただ・・・・・・」


ユージ「ん?」


アク 「誰かに見られたら殺すしかない――。口止めなんてできない。3人に見られたらその場で3人とも殺せ。5人に見られたら5人」

ヒデ 「殺すのか・・・・・・。俺がもし見つかったらできるかな」

アク 「やるしかない。やらなければ捕まって一生が終わる。やらなければ100%やられる。そして何もかもが終わる」

ヒデ 「それでも・・・・・・」

アク 「大丈夫。誰にもバレないって。もしもの話だから」


ユージ「殺しは嫌だなぁ」


アク 「深夜にやるんだし人気はないと思う。爆弾も建物を壊すために使うだけだし人がいないところに設置しよう」


けんた「ちょっといいかな?」

アク 「ん? どうした?」

けんた「最近防犯カメラっていうか監視カメラっていうかね。そういうカメラが街中にあるんだよ。それどうする?」

アク 「え?」

けんた「俺も最近知ったんだけど、ここ新宿にもカメラは何台も設置されている。 かなり高性能で50メートル先の人間の顔もばっちり映る。俺達ももう何度も撮られているはずだよ」

アク 「まじかよ?」

けんた「でも、大丈夫。ログは最低でも2週間ぐらいで消されるしそこまで俺達あやしくないから目をつけられてないはず」

アク 「今気付いて良かったな・・・・・・。2週間か、頻繁に会わないほうがいいな。携帯もあるし」

けんた「俺から言わしたら携帯もちょっと危険な感じがするんだけど」

アク 「え・・・・・・」

けんた「でも大丈夫」

アク 「それ大丈夫か?」

アクは家が燃えたとき警察から電話が来ている経験があり、少し不安になった。

ダイスケ「カメラか、最近そんなん流行ってるからなぁ」

ミッキー「ここは得意の女装で?」

アク  「まー変装は必要だと思うけど女装はどうかな」

ユージ 「まぁ変装しとけば大丈夫かな?」

けんた 「甘いって、目、口、鼻、耳、そういうところの場所を読み取るから髪型とか化粧とかじゃどうにもならないよ」

ミッキー「マジっすか? そりゃマジすかー? ま、マジっすかあ?」

ユージ 「驚きすぎだから」

アク  「じゃ、どうする?」

けんた 「整形?」

アク  「まじ?」

けんた 「冗談♪」

ダイスケ「せっかくの美形を整形したくねーよな。あはは」

ミッキー「美形ですって」

ダイスケ「アクのことだけどな」

ミッキー「・・・♪」


話し合いは続いた。



――。




9月中旬。

新宿歌舞伎町にあるカネイチのホストクラブ『ピカイチ』にはもう誰もいない。

閉店ではないが長期休業ということで営業はしていない。

今まで普通に雇っていたホスト達は他のホストクラブへ移って行ってしまった。


そして、アンズを含むアク達は東京を離れていた。

長野・軽井沢、そこに借りておいた別荘にいた。

最終の打ち合わせだ。

10月8日までもう20日を切っていた。

作戦は決まっていた。



10月8日、眠らない東京が一瞬眠る――。



発電所や電灯、ビル。明かりが目立つところに爆弾を仕掛けて爆破させる。

そして、東京は一瞬闇に包まれる。上空では数十年ぶりに綺麗な星が見えるかもしれない――。


戦後から積み上げてきた建築物、完成するまでに5年かかった超高層ビル、そんなものが一瞬で壊れるかもしれない。


1000万人を軽く超す人間が生活している東京でそんだけ爆発が起これば犠牲者が出るかもしれない。

「テロだ!」と騒ぐやつが出てくるだろう。

それが原因で死んだ人の家族がアク達を恨むだろう。


アク達もバカじゃない、そんなことは全て知っていた。
だが、もう後戻りはできない。

やってはいけないことだということも、10月8日が近づくほど実感が湧いてきていた。


アク 「やっぱ人殺しはしたくないなー」

ユージ「確かになー」

アク 「でも、捕まるのはもっと嫌だなー」

ユージ「だなー」




軽井沢は緑溢れる場所で居心地が良かった。

アク達はどちらかというと田舎育ちなので実家を思い出すこともあった。


アク 「俺が昔やろうとしてたことはこんな派手なことじゃなかったんだけどなぁ」

ユージ「そうだね」

アクとユージは散歩しながら風景とはものすごいギャップのある話をしていた。


アンズは忙しそうだった。

SOILのメンバーが東京に集まってきていた。

数は1万人近く。

グローバル化が進む日本では外国人が街を歩く光景など何も珍しいことではない。

誰もマフィアだとは気付かない。気付くはずもない。



夜になり別荘に全員が集まった。


アク 「みんな怖い顔するなよ」

その発言を聞いた瞬間ミッキーが変顔をしてみんなを笑わす。


アク 「ミッキーは良いな」

ミッキー「えへへ」

――。
アンズ「作戦の確認をもう一度したいんだけど」



作戦内容。

10月8日になった瞬間、発電所を中心に爆破させ東京が一瞬暗闇となる。

東京と言っても全てではない。
渋谷区、新宿区、千代田区、文京区、港区、この5つの辺りを中心に電気を止める。

一時的にパニックとなるのを確認する。


そして、ヘリコプターを使い上空から国会議事堂に向け爆弾を落とす。


それを合図にアンズが呼んでおいた1万人近いマフィアが東京中で暴れだす。



アンズ 「こんなところか。問題なのは誰がヘリに乗って爆弾を落とすかだな」

けんた 「ロボットカメラは上空も映るから一番リスクが高いかもね」

ミッキー「戦闘機とかで追いかけられたらヘリじゃ逃げられそうにもないよね」

けんた 「そんなすぐには戦闘機は動かせないからそれはいいけど、衛星カメラってのもちょっと怖いよな」

ユージ 「落とすやつとヘリを運転する最低二人は必要か?」

アク  「アンズー。SOILから誰か使えるやつはいないのか?」

アンズ 「いるけど?」

アク  「そいつらにやらしちゃえよ。大金払えばなんとかなるだろ?」

アンズ 「んー。金は誰が出すんだ?」

アク  「どうせ下で暴れるんだからいいだろ」

アンズ 「・・・・・・一応聞いてみるが」



それから話すこと1時間――。


アク  「おーし。じゃあ明日からは別行動だ。 警察に俺達が何人いるのかさえ分からないようにしないと。 もし捕まった人がいても絶対に他の仲間のことを言わないこと。これだけは約束な」

カネイチ「まぁ捕まる気はないけど一応な」




翌日からアク達は完全に別行動を取ることなった。

映画をみたりパチンコしたり。

一般的な遊びをそれぞれ楽しみ日が過ぎていっていた。




10月8日の大規模な停電までこのメンバーが1つの場所に集まることはないと思っていた・・・・・・。


だが、思いもよらぬ出来事がアク達をまた集わせた。



それは10月7日の午後6時のことだった。




アク 「え?! マジかよ? すぐ行く!」

アクは何年かぶりにスロットで遊んでいたがユージからの電話によりスロットをすぐにやめた。

アクは2箱ほど出していたがそのコインを換金することなく放置し店を出ていった。



アクがタクシーで向かったのはあきのいる病院だった。





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