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完全犯罪 第5部 3ページ目

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最終更新日 10月16日



ライフルを向けられ絶対絶命のピンチの中、アクはそっと両手を上げた。

首には見たこともない大きなダイヤのネックレスをいくつもぶら下げ、指には眩いばかりの大きな宝石がいくつもある。

アクは今までどんな状況でも諦めたことがなかったがもやはこれまでか・・・・・・。




アクの両手がゆっくりと上がっていくと、キョウも両手をゆっくり上げようと動かした。

そのときだった。

キョウは隠し持っていた煙玉のようなものを両手を上げると同時に相手に向けて投げた。

キョウの以外な行動に慌てた男達は、煙の中ライフルの引き金を1回だけ引いた奴がいたが弾はアクとキョウの間をかすめただけだった。

特にマスクをしていなかったので「ゴホッ、ゴホッ」と前列の武装した男達はむせた。

30人ほどいるマフィアの列も後方からライフルを発射させると仲間に当たる可能性があるので撃てず。

10秒もしないうちに煙は収まりまわりが見えるようになった。

男 <いない>



――。


アク達はさっきまでいた金庫に戻り出入り口に本棚を急いで当てキョウが抑えている間にアクが金塊を急いで本棚の後ろに運び出入り口を抑えた。

アク  「この入り口が向こう側に開くタイプだったら終わってたな」

キョウ 「っていうか、さっき両手上げた時点で諦めただろ?」

アク  「あぁ、あれは0,1秒でも時間を稼ぎたかったんだよ。俺が手を上げればまだ説教なんてしてくれるかなって思ってさその間になんか考えれば良いし」

キョウ 「なんだよそれ(笑)」

アク  「あはは、さて、どーすっかな・・・・・・」

金庫に閉じ込められた二人、食べれそうなものは麻薬ぐらいしかなかった。




――。


金庫の外では。

男 <毒玉だと思って焦ったぜ>

男達はみんなで出入り口を押し開けようとしたがすでに金塊が反対側に山のように置かれていたのでびくともしなかった。

男 <どうせ、あの中はここからしか出れないんだから、このまま餓死するか、俺達に殺されるかどっちかなんだよ>


既にアク達のいる場所の地上には数十人のAASSのマフィアが集合しており例え金庫から上手く脱出したとしても地上でやられるという状態だった。


男 <前のボスを殺ろしたのもあいつのせいなんだろ? なんでわざわざここに来るんだ? 全くキチガイにもほどがあるな>


――。


金庫の中ではアクとキョウがよりいっそう出入り口を固めていた。

外では何やらアク達に武装した男達が怒鳴っている声がかすかに聞こえていたがアク達はシカトしていた。

アク 「とにかく安心できるだけの量は置けた」

金塊の他に麻薬の入った袋など動かせるものを全部出入り口の方へ動かした。

キョウ「しかし、どうするよ? マジックでもここから抜ける手はないぞ」

アク 「ちょっと期待してたのになぁ・・・・・・」

キョウ「しょせんマジックだからタネが無いと――」


アク 「しかし、デブ達が殺られるとは思わなかった。あいつ等マジで強いのに」

キョウ「っていうか人の生首見て、なんで驚かないんだよ。俺は心臓が止まりかけたぞ」

アク 「まー俺は見慣れてるから。仲間が目の前で死んだこともあるしもう慣れちゃってる」

キョウ「さすが悪魔って呼ばれるだけのことはあるな、仲間が死んで泣くとかいう感情はないのか?」

アク 「はは、奴等は俺には泣いて欲しいっていうよりもっと生きて欲しいと思ってると思うぜ」

キョウ「本当かよ・・・・・・」


アク 「さて、食料も無さそうだし、最低でも二日以内にどうにかしねーと体力がなくなって終わりだな」

キョウ「そうかもな、酸素の量だって限られてそうだしなあ。そろそろ真面目に考えるか」



アク 「あれ?! っていうかさ、キョウがココに入る前に大雨洪水警報とか言ってやつって何だったんだ?」

キョウ「あー! あれか、あれはなぁ、俺が無事ノートを取り返して脱出したら、 スケさんっていうかまぁ俺の仲間なんだけど海から大量の海水をヘリで運んで上から流してやろうっていうただの嫌がらせだ」

アク 「嫌がらせか・・・・・・、なんかガキの頃にやった蟻の巣に水を流したのを思い出したよ」

キョウ「あー、アクって相当田舎に住んでた?」

アク 「相当って普通だよ」


アク達は今の状況を紛らわすかのように関係ない話をしばしして盛り上がった。

――。

アク 「さーてと、登ったはいいが降りられないっていうガキみたいな感じになってるがどうするかな」

キョウ「さすがにここじゃあ携帯も繋がらないしなぁ」

アク 「そうだよな。ヘリがあるところまで行けばなんとか外に近そうだから電波も届きそうだけどここは無理っぽい」


強行突破は諦めているアク達は誰かに助けを求めることを考えていた。

キョウ「1日ぐらい俺から連絡なかったらスケさん達が有り金全部使ってでも俺を助けに来るかな?」

アク 「そのまま逃げるんじゃね?」

キョウ「冗談きついよ・・・・・・」


・・・・・・。

アク 「壁は一面コンクリだしなぁ、穴掘って出るわけにもいかねーもんな」

キョウ「ところでどっから作戦が失敗したんだと思う?」

アク 「そりゃーデブ達が殺されたとこだろ。あいつらのためにも俺は生きねーと!こんなところで死んでたまるかよ」

キョウ「お? 急にテンション上がってきたな? どうした?」

アク 「いや、今まであいつ等にいろいろ助けてもらったしさ、今までのこと思い出したら俺が弱気になったらダメだと思った」

キョウ「いいね! で、どうするよ?」

アク 「・・・・・・どうするかな・・・・・・」


さすがにこのときばかりは何も思い浮かばない。


生きてきてこれほど困ったことがあっただろうか。

今まで何もかも順調に進んできたように思えるアクにとっては今の状況が逆にとても新鮮だった。

思い返せば一人SOILに入ったときも仲間を捨て駒のように使い自分がSOILの中で権力を握ることばかりガムシャラに考えていた。



キョウ「正直言うとさ。俺はもう死んでも良いかなって思ってる。ノートも今手元にあるし一応俺の夢は達成できたから」

アク 「何言ってんだよ、これからだろ。それにまだ俺の夢は叶ってないし。俺にはやり残したことがたくさんあるんだ」


アクはそう言いながら”あき”の顔が思い浮かべていた。


キョウ「そーいえばアクの夢ってなんだ? 前にちょっと言ってた気もするが」

アク 「信用できる仲間にしか言わないんだ。悪いな」

キョウ「・・・・・・俺信用されてねーのかよ」

アク 「んー、微妙だな。俺の夢は酔った勢いとかで人に言えるようなものじゃないし、他言することで俺の夢が実現する可能性も少し減るしな」

キョウ「意味わかんねー。まぁいいか。人の夢に首つっこむほど俺も暇人じゃないしな」

アク ≪そんなノリで聞かれても困るんだよ・・・・・・≫


それからアク達は3時間ほど金庫の中で「あーでもない、こーでもない」と脱出方法を考えていた。



アク達が金庫の中で現実逃避(雑談&脱出方法)をしている間になんと地上ではSOIL側のマフィアがアク達のいる場所へ到着し次々と地上にいるマフィアを片付けていた。


ファンバード 「はー、”アクちゃん”もなんでこんなとこ攻めるんだよ。発展したら戦争にもなりかねんぞ」

ファンバードはソイルの命令でアクを連れてこいと言われていた。

メガネが死に際に連絡したのが実りSOILで手の余っている連中が助けにきたのだった。

だが、それにはカナリのリスクを負う。

マフィアが他のマフィアの本拠地を大人数で攻めるということは大問題であるからだ。

ファンバード 「今までのソイルさんだったら軽くシカトしてたのに、アクは助けろってどういうことだ」

しばらくするとファンバードの指揮するマフィアが地上におり銃撃戦となっていた。

ファンバード 「こりゃあもう、下手したらマフィア全体の秩序が崩れるかもな」


しばらくするとファンバードの仲間達は少しずつではあったが敵を押していき中に侵入していった。

ファンバードはヘリから地上に降りゆっくりと中へ入っていった。


ファンバード以外のSOILの連中もトラックやヘリコプターを使って集まってきていた。

――。

そのころアク達は

アク 「あーもー! どーするー」

アクは何も思いつかないことでイラついていた。

キョウ「いっそのこと麻薬でも使ってラリるか?」

アク 「俺、麻薬するぐらいなら死ぬから」

キョウ≪いきなり真剣な顔でそんなこと言われても・・・・・・≫

キョウ「そういや、アクってタバコも吸わないよな?」

アク 「タバコかー。匂いが嫌いだしさ、体力が落ちるらしいから避けてるんだ」

キョウ「確かにな、アクはアスリートだもんな」

アク 「ちげーよ」


――。


金庫の外から漏れてくる声がだんだん静かになっていくのがわかった。

アク 「なんか外が静かになってきたな」

キョウ「そりゃもう何時間もこうやってんだからあいつらも諦めたんだろ」

アク 「あーそーいえば腹も減ってきたな」

キョウ「それ禁句・・・・・・」

アク 「あ、ごめ・・・・・・」





外ではSOIL側がヘリコプターがある場所まで侵入し銃撃戦をしていた。

そのため金庫の前でガヤガヤしていた男達もそっちに加わっていたのだ。

アク 「あー、でもさ、このままこうしてたって何も変わらないし行動しよーぜ?」

キョウ「それはもうあらゆる方法がダメだってさっき言ってたじゃねーか」

アク 「俺さ、昔から誰かの助けを待つとかいうの嫌いなんだよね。待った結果来ないかもしれねーしさ」

キョウ「そんなこと言ったって状況が状況だろう。平気で人を殺すやつが数十人もいるところへ飛び出せねーよ」

アク 「行動って言ってもまさか、真正面からぶつかるなんて言ってないぞ」

キョウ「え? でも道は1つしかないし」

アク 「んー、キョウはなんか持ってないの? さっきみたいに煙玉みたいなやつとか」

キョウ「ん? んーあるっちゃあるけど」

アク 「何がある?」

キョウ「トランプ」

アク 「・・・・・・使えないな。ってそんだけ?」

キョウ「あとー、小型ナイフ」

アク 「お?」

キョウ「あとはー特に無いな」

アク 「・・・・・・小型ナイフじゃなあ」

キョウ「そういえばこの防弾チョッキに小型のピストルって無かったっけ?」

アク 「あ! あったような」


アクは防弾チョッキを脱ぎポケットを色々調べた。

アク 「あった、あった!」

アクは防弾チョッキの裏から拳銃を取り出した。

キョウ「エアガンみたいだな・・・・・・」

アク 「ライフルには勝てそうにねーか」

キョウ「・・・・・・だめだなー」





あらゆる手段を考えたがさすがに生き延びる可能性があるものはなかった。

アク 「あーマジ腹減ったよ」

キョウ「俺も・・・・・・」

アク 「デブの顔でも持ってこればよかったかな?」

キョウ「やめとけ(笑)そして、思い出させるな」

アク 「あ、すまん・・・・・・」


半ば諦めたのか?

アク達はキョウの持っていたマジック用のトランプで遊び始めた。

キョウ「このトランプはな、実は裏の絵柄がちょっとずつ違ってんだ」

アク 「そんなトリビア要らないから、はやく切れよ」

キョウ「せっかく俺が教えてやろうと思ったのに・・・・・・」



・・・・・・。


金庫の外では。


ファンバードが何か大きな声で叫んでいた。

ファンバード <静まれ! 取引成立だ!>

銃弾が飛び交う中ファンバードの声が地下に響き渡った。


男 <はぁ?>

ファンバードの声が届いたのか一時銃弾が止まった。

ファンバード <アク達を1000万ドルで引き渡すという取引がお前達の新しいボスとの間で成立したんだよ>

男 <まさか? 信じないぞ>

ファンバード <本当だ>

そうするとAASSの方の幹部が事情を確認するとそうなったと武装した男達に伝えた。

男 <マジかよ? 俺達のボスを殺したのにそれでいいのか?>

ファンバード <いいから早くどけって、ここで俺を撃つとお前達全員死ぬぞ、上(地上)ではもう俺達の仲間が占拠してる>

男 <・・・・・・みんなどいてやれ>


武装した男たちもSOILに押されていたため、どうなるか心配しているものも少なくなかった。

あっさりどいたのも、このまま殺り合えば最悪この場所がSOIL側に占拠され集めた宝石や金塊が全て奪われかねないと思ったからだ。


ファンバードは武装した男達が眺める中金庫の前まで足を運んだ。

デブ達の首が落ちていたがファンバードは全く気にしていない。

デブ達がSS施設の人間だということも知らないし、まず死んだ人間に興味が無いからだ。

そしてファンバードの後ろからゾロゾロとファンバードの仲間が歩いてくる。

ファンバード ≪ダイヤの道か、どこのボスも無駄が好きなんだな≫

ファンバードはまるでどこかで同じような光景を見たことがあるかのように心で思った。


ファンバードは金庫を叩きながら日本語で言った。

ファンバード 「おーいアクー! 助けに来たぞー?!」

「ドン、ドン、ドン、ドン、ドン!」と金庫の出入り口を叩く。


アク 「あれ? 今なんか日本語が聞こえなかったか?」

キョウ「ありえないって。次アクの番だぞ」

アク達は7並べをして遊んでいた。

アク 「これ二人でやっても面白くねーな」

キョウ「ババ抜きは裏の絵柄で俺にはすぐ分かるし」

アク 「次どうする?」




ファンバード 「おーい! アクー! 俺まだ自分の仕事があるんだけど・・・・・・」


武装した男達はボカンとファンバードを見ていた。


ファンバード <なぁ、爆弾使っていい?>

武装した男達はそろって首を横に振った。

ファンバード <あーもうめんどくせー>

ファンバードは大きく息を吸った。


ファンバード 「いーから返事しろ、ぶっころすぞ!」



アク キョウ 「!」

さすがに沈黙の中ファンバードの怒鳴り声はアク達に届いた。

アクはそっと金塊の詰まれた出入り口の方へ歩き少し麻薬の袋を本棚から下に落とした。

キョウ 「本当に大丈夫か?」

アク  「仮にこれで死んだら、そんときは俺がそれまでの男だったってことでいいんじゃね?」

キョウ 「それカッコ良いな」

アク  「それにもう限界だ。トランプやっても無意味だし」

キョウはにこっと笑った。

アク達は金塊をどけ、本棚をどけ麻薬をどけ、出入り口を開いた。


「キーーーーーッ!」

重いドアが開いた。

ファンバード 「よう! 王子様」

ファンバードはアクの姿を見て気の聞いたセリフを吐いた。

アク 「うあ!」

ファンバード 「うあ! じゃなくて、助けに来たぜ。ソイルが呼んでるから行くぞ」

キョウ 「嘘? マジ助かったの俺等?」

アク  「どうやらそーみたい」


男  <お前らどうでもいいから、その宝石類置いてけ>

アク <バレましたか・・・・・・>


武装した男達をよそに堂々とダイヤの道を抜けアク達はファンバードに連れられてインドの高級そうなホテルへ大型トラックで向かった。

ホテルに向かう途中キョウがどうしてもトイレに行きたいというのでキョウを外に出すとSOILの仲間を得意のマジックで振り払いどこかへ消えてしまった。


SOILの男 <すいません! キョウというやつを逃がしました!>

ファンバード <ふざけんな! すぐ探して来い!>

SOILの男 <は、はい!>


アク 「あはは、そんなことだろうと思った」

ファンバード 「ちょっとは反省しろ。さっきも言ったがAASSの基地を攻めるなんてどうしたんだ? アクらしくないんじゃないか」

アク 「しょうがないだろ、受けた依頼がそうだったんだから」

ファンバード 「断れよ」

アク 「断れる雰囲気でもなかった」

ファンバード 「・・・・・・お前知らねーぞ。ソイルさんカナリ怒ってたから殺されるかもよ?」

アク 「それはないよ。どうせ殺すなら大金払って助けたりしないだろうし」

ファンバード 「そういうことか・・・・・・」

ファンバードはアクがなんの抵抗もしないことが理解できた。

しばらくするとインドの高級ホテルに着いた。


アク 「はー、腹減った」

ファンバード「良いから歩け」

最上階の部屋に行くと赤いじゅうたんが敷き詰められておりふかふかなイスがいくつも置いてあった。

さらにその部屋の奥に行くとソイルが社長が座るような黒いイスに座ってアクを待っていた。

ソイル <エーエスの基地に乗り込んで失敗したそうだな>

アクはソイルと直接話したことがそれほどなく緊張した。

アク  <・・・・・・はい>

ソイル <施設の仲間を5人も死なせたそうじゃないか>

アク  <・・・・・・はい>


凄い威圧感がアクを襲う。アクはソイルの目を見ることができず下を向いていた。

ソイル <俺はこの一件を重く受け止めお前に重い罰を与える、さらにSOILから外すことした。以上だ。>

ファンバード ≪・・・・・・?≫

ファンバードは疑問に思った。なぜアクを殺さないのか。

今までにも色々アクと同じような奴を見てきたが全員殺されている。

ソイル <もういい消えろ>


アク 「え!?」


アクは詳しい事情を聞かされることなくソイルの部下にその場で抑え込まれそのままどこかへ連れて行かれた。


ファンバード <ソイルさん、どうしてアクを殺さないんですか?>

ソイル   <あ? あぁ、あいつ日本で暴れるって良く言ってただろだからだ>

ファンバード <え? それはつまり?>

ソイル   <SOILを抜けたからと言ってあいつが暴れるのをやめるとは思えない。だから、暴れたら・・・・・・>

ソイルはファンバードに事情を説明した。
――。

ファンバード ≪そういうことか、アクが暴れて日本が混乱している中SOILがおいしいところを持っていくと≫


――。


それから数日経ち。 10月10日。午前6時。


アクは東京湾の港のコンクリートの上で横になって倒れていた。

アクは目を覚ました。

アク  「ん? 頭ガンガンする。 ここどこだ?・・・・・・」


アクが東京湾だと気付くのには時間がかからなかった。

アク  「俺どうしてこんなところに・・・・・・」


体はボロボロに汚れていた。

手も足もちゃんとあり指もしっかりと付いている。

両目も見えることからアク自身には何もされていないことが分かった。


アク  「おかしいな、重い罰ってなんだったんだ?」

アクは横になっている体制から体を起こし立とうとしたが足がふらついて思うように立てない。

アク  「あーだめだ力がはいらない」

アクは食事を取っていないため全身に力が入らないのだ。

というか、生きていることさえがある意味奇跡的状況だった。

アクはソイルといた場所から気絶させられそのまま日本に運ばれたのだ。

そして運んだ男達はアクをそっと寝かせそのまま日本に散らばっていった。

日本に潜伏するのはアクが暴れることを予想しているためで、これからどんどんSOILの人間が日本に入ってくることになる。


アク  「くそ、力が入らねぇ」

アクがしばらく動けずにいると漁師のような格好をしたおっさんがアクに近づきアクを背負ってどこかへ連れて行ってしまった。





――。



そんな頃、ゼン達は。

ゼンは無事東大を卒業し国家公務員の資格を取り警察官になった。

いきなり即戦力と父親や父親の知り合いの警官にも期待されていたがゼンは1年目ということもあり渋谷の派出所に配属することになった。


ゆきも東大を卒業し憧れであった探偵に。

探偵と言っても事務所は実家で携帯で仕事の依頼を待つ。

東大を卒業するまでにいくつもの依頼を受けて新聞にも度々載っていたので評判は良く仕事も多くはなかったがゼロでもなかった。

愛華知恵も無事卒業し大3のときに司法試験を受け見事に合格。一人前の弁護士になるには見習い期間というものが2年ほどあり今はベテランの弁護士の下で勉強している。


――。


ギャル 「でさーマジ、ムカツクんだけど。ねー聞いてる?」

ゼン  「はい、さっきから何度も聞いてると・・・・・・」

ギャル 「でさー、サチコの野郎が俺の彼氏取ったんだよ。捕まえて牢屋にでもぶちこんでよ」

ゼン  「・・・・・・女性なんですから自分のことを”俺”と言うのはやめた方がいいですよ。ナオコさん」

ナオコ 「うるっせーんだよ。真面目ぶってんじゃねーぞ」


ゼン  ≪・・・・・・なんで僕一人のときにこうなるんだろう・・・・・・≫


渋谷にある派出所はいつも忙しく警官が常に10人以上いたのだが10人いても間に合っておらずゼンは度々一人で交番を任されることがあった。

ナオコ 「もーいいよ、どうせ頼ったって何にもしてくれないのは分かってたんだ。どいつもこいつも」

ゼン  「ちょっと待って下さい」

ナオコはそういうとゼンの声も無視し街へ消えてしまった。

ゼン  ≪仕事は想像以上に疲れるなぁ・・・・。半年も経つのに全然慣れないや≫


駅で酔ったおじさんやチンピラのケンカなどゼン達の仕事は絶え間なく続いていた。


そして、渋谷では若い子が中心となってギャルサークルいわゆる”ギャルサー”と呼ばれる集団が数多くできておりゼン達渋谷の警察官も目を見張っていた。


――。




ゆき 「・・・・・・仕事の依頼こないかな・・・・・・」

ゆきは家のリビングで依頼を待つと共に最近作った事務所のホームページを眺めていた。

ゆき 「我ながら良いできだ。でも一日のアクセスが16件って・・・・・・そのうち6件は自分だし」


ゆきは両親にせっかく東大を出たのだからもっと安定している仕事に就けと散々いわれたが無視していた。

そんなゆきに一本の電話がかかってきた。

ゆき 「もしもし、白谷探偵事務所です」


子供の声「バーカ、バーカ」


「ブチッ」電話がきれた。


ゆき 「・・・・・・。昔は無料でやってたから良かったんだなぁ。世間は厳しい」




ゼン達はそれぞれ自分のしたい仕事に就き一生懸命頑張っていた。


――。



アクはおっさんに拾われ市場にある座敷のようなところでマグロ丼を食べていた。

おっさん 「うまいか?」

アク   「・・・・・・」

おっさん 「なーにーちゃん。あんなところでどうしてたんだ?」

アク   「・・・・・・」

おっさん 「なぁ、声聞かせてくれよ」


アク   「うるせー。飯食って口がふざかってんだ」

おっさん 「・・・・・・あー悪かったな。それにしても声が聞けて良かった」

アク   「おっさん、ありがとな。腹減ってて死にそうだったんだ」

おっさん 「それそれ、その感謝の気持ちを待ってたんだよ」

おっさんはニコっと笑いアクの持っている丼にマグロやイカなどをのせようとした。

アク   「もう食えないって(笑)」

おっさん 「食え食え。オラァ、一人娘がいなくなって寂しいんだ」

おっさんは自分のことを話し出した。

アク   ≪・・・・・・≫


――。

おっさん 「で、高校行くって言うから金出してよ。俺は高校なんて行かなくてもいいって言ってるのに」

アク   「はあ・・・・・・」

おっさん 「名前はナオコっていうんだ。もうそうだなー5月からだから5ヶ月も会ってないよ」

アク   「そんなこと俺に言ったってどうにもならないぜ」

おっさん 「そうだよな。でも寂しいんだよ」


アク   「・・・・・・んじゃ俺消えるから、ありがとな」

おっさん 「え! 冷たっ!」


アクはおっさんの話を振り切りけんたの家の方へ歩き出した。


アク 「俺ってソイルをクビになったんだよな。どんな顔してあいつ等に会えばいいんだ」

アクはユージ達のことを思い浮かべながらけんたの家に向かった。


アクの格好はズボンは少しぶかい黒いスーツでこれは元から履いていたものだ。

上は防弾チョッキは脱がされており元から着ていた黒いタンクトップに黒いスーツを着せられていた。

アクはそっとズボンのポケットに手を入れるとデカイダイヤの指輪を見つけた。

アク  「あ!」

他の装飾品はAASSの基地に置いてきたのだが1つだけポケットに入れたままだったのだ。

アクを日本まで運ぶのに防弾チョッキを脱がしたのだが宝石のことは誰も気付かなかった。

アク  「まーいいか、1つぐらい」

アクは今まで起こったことをあまり気にせずけんたの家に向かった。


アク  「ってけんたの家ってどこだっけ? 六本木・・・・・・ヘルズ?」


アクは携帯で電話すればいいものを電話もせずにけんたの家を探していたが、そのまえにあきに会いに行こうと急に思った。

アク  ≪もーそろそろ、あきも目覚めててもいいよな?・・・・・・≫

アクは半ば諦めていたがあきのいる病院へとりあえず向かった。


――。



それから4時間後アクは一人で渋谷の公園のベンチで座っていた。




その4時間の間に何が起こったのか。

4時間前――。午後1時。

アクは一人であきのいる病院へ向かった。

ポケットにはインドから無意識に運んだダイヤの指輪が1つ入っている。

アクはあきのいる病室へ。

あきはアクがインドへ向かう前に来たときとは違う部屋にいた。

個室で窓際にベットがある。

窓が4分の1ほど開けられていて、そこから入ってくる風が白いカーテンを揺らす。

カーテンが揺れるとその隙間からあきが寝ているベットに光が差し込む。

ベットも白色がベースでどこか天国かのような雰囲気に包まれていた。

アクは誰もいないことに気付きあきに近づくとベットの隣にある丸いイスに腰をかけた。

あきはまだ目覚めていないようだ。

アクの座っているイスの隣には白い机が置いてありその机の上には千羽鶴のようなものが置いてあった。

さらにその付近には紙袋に手紙のようなものがたくさんおいてある。


アクはダイヤの指輪をあきの左薬指にはめようとしたがぶかぶかで、はめれないので仕方なくネックレスを外すとネックレスにダイヤの指輪をはめた。

これでアクからの指輪のプレゼントは2つだ。

2つ綺麗にならんであきの首から下げてある。


アクはSOILから外され、特に何もすることがなかったのであきのそばにずっといた。

アクはユージ達やあきの母親がいないことを少しも不思議には思っていなかった。

4年間も目を覚まさない人間に24時間付きっ切りというのも変な話だと思っていたからだ。

30分もしていると、かすかに入ってくる窓からの光がアクも包み込みアクも気分良く寝てしまった。



「トン、トン」と肩を叩かれアクは目を覚ました。

ふと時計を見ると午後4時だった。

アクの肩を叩いたのはあきの母親だった。

あきの母親は病人かのように細くなっていて、あきより重症なのではと思った。

あき母 「アク君良く来てくれたね」

アク  「あーどうも」

あきの母親とアクはしばらく雑談しているとあきの母親が意味深はことを言い出した。


今日はユージ達に任せてあるのに来ていなく、急用ができたときは連絡してくれるのに今日に限ってないのだと。


アクはユージ達と数年間一緒に生活していて決して約束を破るような奴ではないと知っている。

アク ≪おかしいな・・・・・・≫

アクは違和感を感じあきの母に用事ができたと適当に言い病院を後にした。

アクは病院から出ると携帯をポケットから取り出し電話しようとしたが電池切れだった。

アク 「・・・・・・そういや随分使ってなかったなあ」

アクは渋谷方面に歩きながら携帯ショップを探すとそこで充電させてもらった。



午後4時40分。

携帯、充電完了。

アクはすぐにユージやミッキー、ヒデに電話をしたが繋がらず。

アクはさらに違和感を感じけんたに電話をしたが繋がらず。

凄く怖くなったアクは、不本意だったがカネイチとダイスケにも電話をしたが繋がらず。

ゴウにも電話を入れたが繋がらず。

やっと電話が繋がったのがミサキだった。


ミサキ 「もしもし?」

アク  「おぉ! ミサキか?」

ミサキ 「何よ今更!」

アク  「・・・・・・」

ミサキ 「ピカイチに行ったらもう辞めたって、それ以上のこと誰も言わないし、私がどれだけ泣いたか」

アク  「ゴメン、ゴメン」

ミサキ 「で? 何よ? どうせ何か困ったことでもあったんでしょう」

アク  ≪気持ちの切り替え世界レベルだな≫

ミサキ 「おーい? きーてる?」

アク  「あーごめんごめん。ユージ達と連絡が取れないんだけど何か知らないか?」

ミサキ 「え? 知らないわよ。もう3年ぐらい会ってないし」

アク  「とにかく電話に出ないんだよ。カネイチもダイスケも」

ミサキ 「え? 一昨日店に行ったときは元気そうにしてたけど」

アク  「そっか、たまたま出ないのかな」

ミサキ 「あはは、嫌われたんじゃない?」

アク  「・・・・・・案外そうかもな・・・・・・」

ミサキ 「私今忙しいから電話切るね。また会ったら連絡するから」

アク  「ああ、悪いな頼む」

ミサキ 「はいはーい」


ミサキは電話を切った。

4時50分。

アクの携帯がなった。

アク 「非通知?」

アクはユージ達と関係があると思い電話に出た。

アク 「もしもし?」

男  「後藤アクさんでいらっしゃいますか? 愛知県警のものです」

アク 「・・・・・・? そうですけど、何か?」

警察官「後藤アクさんの実家が昨日全焼しまして、無事か確認するために電話をしました」

アク 「はぁ?」

警察官「良かった生きていて、それでですね。親御さん達が行方不明なんですよ」

アク 「え? お前本当に警察か? だまされねーぞ」

警察官「落ち着いて下さい。本当です。今どちらにいらっしゃるんですか?」

アク 「ちょっと待てよ。その前にどうやって俺の番号(携帯番号)調べたんだ」

警察官「住所から携帯会社に連絡を入れまして勝手ながらお聞きしました」

アク 「・・・・・・」

警察官「家が燃えたことはネットか何かで確認できると思います。それで今どこに?」

アク 「今、東京だよ」

警察官「東京ですか。いろいろと手続きや直接聞きたいことがあるので愛知に戻れませんか?」

アク 「それはできない。それより姉はどうなんだよ?」

警察官「お姉さんとはこれから連絡をするつもりです」

アク 「じゃあ俺は帰れないから姉に手続きとやらをやらせて下さい。では」

アクは勝手に電話を切った。


ここでアクは全てを悟った。


インドでの一件の”重い罰”とはアクの家族や周りの知人を消すというものだ。

アクは4年間SOILの一員として仕事をしていたのでSOILがどのような罰を与えるのかも少しだけ知っていたのだ。

罰でよくあるのはその本人を殺すというもの。

これが一般的だが、他にはその本人の財産を全て奪うというものもある。

アクには財産と呼べるものが特に無いので家族や知人が犠牲になったと考えられる。

アクが東京湾に置かれていたということからSOILの奴等が日本に潜伏しているという可能性は十分分かるし ソイルやファンバードには世界旅行のときに皆会っている。

そこでソイルとファンバードには会っていないのはミサキとまどかととーるだ。

そして、なぜヒデがいないのかというと、どうせ、ユージとミッキーと四六時中一緒にいたのでついでに持っていかれたというところだろう。


アク 「ほぼ間違いないな。あいつら仕事はやいから。ってかそんなことして何が面白いのやら・・・・・・」

アクはそうは言うもののカナリ落ち込んだ。





気が付けばアクは渋谷の大きな公園のベンチに座っていた。



――午後5時。

辺りは暗くなっていく。

アクの前を色々な人が通っていく。

通行人でよく見かけるのは10代の若い奴等だ。

4,5人の男女のグループで何か話をして通り過ぎていく。


しばらくすると完全に日が落ち、電灯が光りだした。


アクはずっと下を向いて考えていた。

SOILに入ると決めたとき、ただではないと思っていた。

もしかすると死ぬかもしれないとも思っていた。

麻薬を打たれ麻薬無しでは生きれない体になるのかもしれないとも思っていた。


しかし、まさか家族やユージ達が犠牲になるとは思っていなかった。

アク ≪なんで周りなんだよ・・・・・・≫

そして、アクは何度もユージやけんたの電話をしたが繋がらなかった。


さらにアクは今までのことを思い返していた。

今までずっと走り続けてきた。

デパート事件のときも人を殺したという事実を反省するのではなく、どうしたら捕まらないのかを第1に考えてきた。

頭の中では完全犯罪をすることを常に考え体を鍛えたりニュースを見て世間ではどんな犯罪がされているのかも勉強していた。


アク 「そもそも俺がこうなったのは自分を変えたかったからだ。
あのままでは自分の親のように毎日しんどい仕事をする未来が見えていてそれが嫌だからこっちの道に来たんだ。

・・・・・・

その結果がコレか」


アクは今までなんの疑いもなく自分が半ば正しいと思ってやってきていた。

家族には自分のことは自分でやると大きなことを言った日もあったと思い返していた。



SOILに入るのを決めたことは、何の罪もないあきが事件に巻き込まれ植物人間になったことで全てが嫌になったから。そのときは日本を潰そうとまで思いつめていた。


アクはベンチで、ずっと考えていた。

振り返るといつも自分の周りには頼れる仲間がいて、ユージ達がいなかったら今の自分は無いこともずっと考えていた。


そして今、仲間がいなくなった。

知人はミサキと連絡を取っていないまどか、とーるだけ。

まどかは金のためならなんでもすると4年前は言っていたがそんなやつが4年間も何もせずに待っているなんて思っていないし、 あれだけのビジュアルがあればキャバクラで働いたり、社長の愛人にでもなって今は金に困らない生活をしているのだとアクは思っていた。


アク ≪とーるは何してるんだろう≫

アクはとーるに電話をかけたが電話に出ず。

アク 「・・・・・・4年間もほっといたら普通裏切られたと思うよな・・・・・・」

――。
ぼーっとしているとアクのいるベンチから50メートルほど前に今風の男女のグループができ始めガヤガヤ騒いでいる。

アク 「・・・・・・バカ共が」

アクは軽蔑したような目でそのグループを見ていた。


しばらくするとそのグループはラジカセから流れてくる音楽に合わせ数人が踊りだした。

アク 「・・・・・・」

ベンチに横になって空を見上げていた。

ラジカセからリズムの良い音がアクの耳にまで届く。

アク ≪うるせーな・・・・・・≫


アクがまた体勢を変え座るとさっきまで50メートルほど前でやっていた集団の人数が増える共にアクを囲むような形でいくつもの集団が出来上がっていた。

アク 「こいつら、何してんだ? 今日は祭りでもあんのか」


そうは思ったものの気にすることなくアクは下を向いてこれからどうするか考えていた。

ユージ達を探すと行っても日本国内にいる可能性は低い。

ソイルとけんたが知人だからと言って全員が殺されずに生かされていることは考えにくい。


そして親。

15歳からけんたの家で住み、パチンコ屋のサクラをして金もあったので親に迷惑をかけずに 生活していたアクは普通の家庭より親との距離が遠く深い話をしたことがあまりなかったので情というのがあまりなかった。

アクはいつもペンキくさい父親が好きではなかったし、役に立たない母親も特に好きではなかった。

というか、興味がなかったのだ。



アク 「・・・・・・あいつ等俺を恨んでるだろうな」

アクは今までにない落ち込みようだ。

あきが植物人間になったときは落ち込むというより怒りの方が勝っていた。


それからアクはそのベンチに座り込み三日が過ぎていた。

その間食事もせずただずーっと座って考えていた。

周りでは肌を焦がし、茶髪でピアスを開け女子高生のような格好をした人やスーツを着て隣のベンチに座るおっさんとかが入れ替わり通り過ぎていった。


アクはこのまま死んでもいいなんて思っていた。

生きることに疲れたのだ。生きているから苦しみがあり、大事な人を亡くし悲しむ。

それに今まで自分がしてきたことは他人の人生も変えてきたのかもしれないとも思っていた。

とくにユージやミッキーはずっと一緒にいてあいつ等はいつも着いていくと言っていたが本当はやりたいことがあったのかもしれないし・・・・・・。


そして今までずっと考えていた”完全犯罪”は、実行すればほぼ確実に成功できるというところまでアクの中では煮詰まっていた。

その完全犯罪を実行することも、また誰かに迷惑を掛けるだけ。


なぜ自分がこの世に生きているのか、そんなことは誰にも分からないがアクはなぜ自分が生まれてきたのか凄く不思議だった。

アク ≪やっべ、めまいがしてきた≫

アクは三日間何も食べていないので体力が限界に近づきつつあった。

ふらっ、ふらっとと頭をぐるぐる回してベンチに倒れそうになっときだ。


女 「なにしてんの?」

あきに似た声でアクに話しかける女が現れた。





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