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完全犯罪 第4部 3ページ目

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ファンバード≪コイツ、なんて目してやがる≫

ファンバードがアクの瞳を見て少し驚いた。

カネイチ ≪あほっ。空気読めっ!≫

カネイチはアクの発言に心臓が止まりかけた。

ゴウは気絶しようになり一瞬ふらついた。

ミッキーは心臓に毛が生えているのか、ちょっと笑った。

ファンバード 「ああ、そうだったな。お前達の仲間はこれで全部か?」

意外と冷静なファンバード。
数々の交渉をしてきたファンバードは小さなことでは怒らない。

それに、今回の作戦では日本人の協力がいるとソイルに言われていたのでアク達を怒らせるわけにもいかなかった。

アク 「日本にはたくさんいる」

ファンバードになめられたくなかったアクはとっさに嘘をついた。

ファンバード「何人ぐらいいるんだ?」

アク 「えっと、把握できてるだけで1万人」

ファンバード「日本だけで1万人?!」

ファンバードが日本のヤクザで1万人も組員がいる組は知らなかった。

ファンバード「名前は?」

アク  「な、名前? 個人の?」

アクは組織の名前を聞かれたことはすぐにわかったが時間稼ぎのためにとぼけた。

カネイチ ≪・・・大丈夫か。嘘はバレちまうぞ・・・≫

ユージ ≪アクも何もなしで嘘はつかないだろう≫

ユージはアクを信じるしかない。

ダイスケ ≪どーすんだろ。アク(笑)≫

アクの発言がどんどんエスカレートしていく。

ファンバード 「名前あるだろ?組織の」

アク  「ああ・・・・・そっちか。名前はね。悪夢(アクユメ)」

ファンバード「あくゆめ? あくむじゃなくて?」

アク  「本当に日本語詳しいですね。悪夢と書いてアクユメと読ますのが一種の暗号みたいなもんです」

ファンバード「なるほどな。悪夢という字を見せてアクユメと言えば仲間って判断できるってわけか。1万人もいたらそのぐらいしないと見分けつかないよな」

ユージ ≪え・・・上手いように受け取るんだな・・・嘘バレバレじゃん(笑)≫

アク以外のメンバーは嘘がバレないように自然とうなずいたりしてアクをフォローする。

ファンバード 「SOILも日本人に何人か仲間がいるけどアクユメのこと今度会っとき聞いてみるかな」

アク 「まだ水面下でしか動いていないので、知ってるかな」

ファンバード「1万人って日本最大級だろ。もっと自信持てよ。自分が思ってるより案外認知度高いぞ」

アク ≪あはは(笑)≫

アクは下を向いて少し笑った。

カネイチ ≪にやついてる場合かよ≫

ファンバード 「そのアクユメってのはお前が頭なのか?」

アク 「ああ」

ファンバード「お前何歳だっけ?」

アク 「18」

ファンバード「すげえーな。どうやってそんなの作ったんだよ?」

アク 「暴走族って知ってますか?」

ファバード「ああ、あいつ等がお前んとこの連中か。俺でも見たことあるぞ」

アク 「アハハ」

カネイチ ≪アハハじゃないだろ。そこは否定してくれよ・・・・・・≫

アクの暴走は止まらない。

ユージ ≪こいつ、暴走族知ってますか?って言っただけなのに勝手に解釈したな(笑)≫

ファンバード「そっかそっか。じゃあ今度、日本製の良いバイクとかこっち流してくれよ」

アク  「そういうのには興味ない。本題に戻そう」

アクは真面目な顔になった。

ユージ ≪あぶねー。バイクなんて無いもんな(笑)≫

ゴウがバイクという言葉に反応し少し体がピクっとした。


そしてファンバードからどのように弱いマフィアを潰すのか詳しい説明があった。

それから話し合いは3時間続けられた。


どんな作戦かというと。

まず大きく3つに分かれているというマフィアの説明。

SOIL 通称ソイル (アク達がいるところ)

DOLL 通称ドル  (2番目に大きいマフィア)

AASS 通称エーエス(3番目に大きいマフィア)


DOLLは最近アメリカに力を入れておりアメリカ人の仲間が多い。

AASSはアジア周辺に力を入れておりインド人を中心にその周辺の国々に仲間が多いといわれている。

この2つが合体するとSOILを抜き世界最大のマフィアになると言われている。

現在の力関係でいえば、

SOLLが100なら、DOLLは70、AASSが60と言ったところと推測されている。


そこでまずAASSを潰す。頭を潰し確認できているだけの幹部の皆殺し。

AASSの幹部は全員で30〜50名ほどといわれているが10人ほどしかまだ分かっていない。


今SOILのスパイがAASSの仲間になり頭の居所を随時ソイルに知らせているという状況で、
つい最近AASSの頭がドイツのベルリンに潜伏しているという情報が知らされたばかりだ。

アク達をフランクフルトに呼んだのはそのせいでもあった。


ファンバードの話ではこれからベルリンに行き総攻撃を仕掛けるという話でアク達に頭の乗る車に爆弾を仕掛けて欲しいということだ。

まさか観光客が爆弾を持っているなんて普通では考えられないから不意打ちが仕掛けられるという話だった。


爆弾を仕掛けるだけの仕事。
マフィアのボスが車に乗りこんだときに遠隔操作で爆発させ一気に銃撃戦になると予想されている。

アク達は爆弾を仕掛けた後は安全な場所に避難しておくだけなので銃撃戦に巻き込まれるわけではないので安全だとファンバードはいうが・・・・・


ユージ 「危険だよな・・・・・・」

ダイスケ「遠隔操作ってことは、タイミング悪くボスが出てきたら俺達ごと爆破させるってこともありうるんじゃないか」

ファンバードがトイレに行っているときに話せるだけの会話をしていた。


ファンバードが帰ってきた。

アク 「ちょっと俺もトイレ」

そういって席を外したアク。

けんたのいる隣の部屋へ行くと。

アク 「・・・・・・こいつらワイン飲んで寝てやるがるな」

テーブルの上にワインが何本か倒れている。

再開を祝して乾杯でもしたのか。ソイルもけんたもソファーに横になって寝ている。

アク ≪なんつーのか。器がでかいというのか、あほというのか≫

ソイルの仲間と思われる男たちは3名しかおらず他のものは帰宅したと思われる。


アク 「もう夜か」

アクはトイレに行くとファンバードのいる部屋に戻った。

アク 「おい、隣の部屋でソイルとけんた寝てたぞ」

ユージ「あーしってる。しってる」

そういうユージ。
アク達の部屋にもアクがトイレに行っている間にワインが運びこまれていて宴会ムードだ。

ファンバードはワインをラッパ飲み。

ファンバード 「やっほー」

ミッキーとファンバードが打ち解けあうのにそう時間はかからなかった。



朝まで飲み明かしアクが目覚めたときはもう9時だった。

みんな周りで寝ている。


アク 「マフィアのイメージガタ落ちだぜ」

アクはけんたと話がしたいと思い隣の部屋に行った。

けんた「お? アクか?」

昨日のことは何もなかったような顔をしているけんた。

アク 「どうやらソイルって凄い奴らしいな」

けんた「俺もまさかね。ソイルがそんなお偉いさんだとは思わなかった」

ソイルはどこへ行ったのかわからないが部屋にはいない。

ソイルの部下と思われる男が二人いるがけんたと話しているからアクも緊張感はない。

アク 「昨日ファンバードに日本に仲間が1万人いるって言っちゃったよ」

けんた「え?」

アク 「大丈夫。1万人は集める予定だったから」

アクは1万人集める方法をこっそりけんたにだけ話し始めた。

――。

けんた「そんな上手く行くかな?」

アク 「でも、それしか方法ないだろ」

けんた「1万人かー。それだけ集めればきっとなんでもできちゃうよね」


アクがけんたに話した1万人集める方法とは、やはりネット。

日本にいるときにダイスケに頼んだものと集め方はほぼ同じだ。

けんた「でも、暴走族はネットなんてしないと思うから集めれないよ」

アク 「暴走族はどうでもいいんだ。とにかく数。理想は警察官を上回ることだな」

けんた「日本警察って何人いるんだろうね」

アク 「昔ネットで調べたけど30万人ぐらいだと思う。1万じゃ足らないな」

けんた「でもそれ全国でしょ? 東京だけなら1万人ぐらいじゃないの?」

アク 「1万対1万か。それにマフィアの力を借りればもう日本終わりだな(笑)」

けんた「金さえ盗れれば日本潰さなくてもいいでしょ(笑)」

18そこらの人の会話とは思えない内容。

ただお互い冗談でないのが怖いところ・・・・・・。


翌日。

ファンバードからアク達が協力するとソイルに伝えられソイルはご機嫌。

ソイルとけんたの話し合いでは特に何も重要な内容はなく、ただ昔の思い出を語っているうちに酒が入り酔ってしまったようだ。

アク達はソイルと別れファンバードとSOILのメンバー二人と共にベルリンへ向かった。


ヘンテコなトラックの荷台に乗せられしばらくするとドイツの首都ベルリンについた。

ファンバード 「なんで交渉役の俺がこんな危険な目に立ち会うんだよ」

ファンバードも自分の実績と今の状況で日本語が話せるやつは自分しかいないことを知っているにも関わらず愚痴を言っていた。


ベルリンの高級そうなホテルについた。

日も暮れ。あたりは暗い。ベルリンはフランクフルトと同様自然に溢れ建物が綺麗。

日本では見かけないような作りの建物に少し感動するアク達もこれからやることを考えると感動している暇すらなかった。


ホテルの一室。

ファンバードは茶色い机に真っ白で大きな紙を広げるとボールペンで地図を描き始めた。

ユージ ≪うまいなあ≫

ファンバード 「みんな聞いてくれ。今ここのホテルにいるんだけど・・・・・」


ファンバードは仲間に部屋の隅々まで盗聴器がないか調べさせたあとおもむろに説明を始めた。

ファンバード 「このホテルの反対側にエーエスのボスがいるんだ。 今からしばらくここから見張ってホテルの玄関に黒い車ベンツが止まったらそれがボスの車だ。 あっちのボスはそんなに急いで出てこないからその間に車の下に爆弾を仕掛ける。 仕掛けたあとはホテルの右側にそれとなく歩いて俺達がさっき乗ってきたトラックがあるからその荷台に隠れておいてくれ。 すぐに仲間が行ってお前達はフランクフルトに帰れ」

アク 「それって本当に俺達じゃないとだめなのか?」

ファンバード「下見てみろよ。あの通りは人が多くて西洋人だとすぐバレちまうんだ」


けんた 「ちょっと待って。爆弾って今あるの?」

ファンバード「もちろん」

けんた 「見せて欲しい」

ファンバードの仲間が爆弾の入った少し頑丈そうなバッグを持ってきて机の上においた。

ユージ 「おー」

けんた 「結構大きいね。開けても大丈夫?」

ファンバード 「おう。何か問題でもあるのか?」

けんた 「いや。どんなのかと思って」

けんたはバッグをあけた。

ダイスケ「おおお」


ダイナマイトが8本。導火線が1つにまとめられている。その導火線の先には小さいアンテナのようなものが取り付けられている。

ダイスケ「し・・・シンプルだな」

けんた 「これ大丈夫か・・・・・」

ファンバード「俺達は10年前からコレ使ってるさ」

けんた 「10年前って・・・」

ミッキー「古〜」

ゴウ  「ダイナマイトっていうのもリアルな話だけど・・・・・」


けんた 「俺がちょっと改良してもっと威力が出てバレにくいのしましょうか?」

ファンバード「え? お前そんなことできるのか?」


SOILは基本的に戦いを好まない。いつも脅しと交渉で取引を済ませてきた。
資金稼ぎのほとんどは麻薬売買だ。
しかしDOLLとAASSが組むとなってはもう交渉とか脅しとかそういうレベルでは解決できない。

昔SOILのメンバーが爆弾を作っていた時期があったが失敗してその工場もろとも大爆発したことがありそれ以来爆弾を作ることをおろそかにしていた。


けんた 「できますよ。ソイルに俺がやったってちゃんと伝えといて下さいね」

ファンバード「分かった。成功したらお前達はSOILの恩人になるわけだしな」

けんたはアクと目線を合わせて少しニヤついた。

けんた 「ちょっとサッカーボールとお菓子がいるので買ってきてくれます?」

ミッキー「俺もお菓子ほし〜」

けんた 「菓子は俺達が食べるんじゃないよ」

ミッキー「え?」

ファンバード「サッカーボールとお菓子?」

けんた 「はい。サッカーボールにダイナマイトを埋めればみためサッカーボールなのでバレにくくなりますし、 間違えて車の下に入り込むことはよくあることです。しかもこの国はサッカーが盛んだからサッカーボールを持ち歩くのは抵抗がない」

ファンバード「頭いいな。そういうことならサッカーボールを買ってこよう。んでお菓子は?」

けんた 「お菓子の説明はあとで」

ファンバードはアク達のホテルに居ない、ホテル周辺で隠れている仲間に連絡するとしばらくしてアク達の元にサッカーボールが届けられた。

けんたはその間に用意させた工具を使って器用にサッカーボールを切り、ダイナマイトを仕込んだ。

ファンバード 「この中って電波届くのか?」

けんた 「ちょっと待ってて下さい」

けんたは導火線の先端を外し一度バラバラにするともう一度1つにまとめサッカーボールの空気穴辺りに固定させた。

けんた 「まあ大丈夫だとは思いますけど念のために」

頑丈なバッグよりサッカーボールの方が簡単に破裂しますから威力はあがっているはずとけんたは説明した。

実際に爆発するか試すわけにもいかず予備のためにもう2つサッカーボールに爆弾を仕掛けたものを作った。

けんた 「ドイツは俺達が思っている以上に街の外に隠しカメラが設置されている。
たぶんあのホテルの前もどこからから撮っているはず」

ゴウ  「そんな風には見えないけどな」

けんた 「だから隠しカメラなんですよ」

ゴウ  「そっか(笑)」

けんた 「俺達がサッカーボールを仕掛けるよりその辺にいる子供に仕掛けさせたほうがいいと思うんだけど」

ファンバード「俺は相手のボスを殺せと言われているだけだからやり方は任せる」


けんた ≪ほらでた。『相手のボスを殺せと言われているだけ』ってことは俺達がどうなろうと知ったことではない。つまり俺達を含め爆発させることだってありえる≫

けんたは仲間のようなフリをしているが心の底からSOILのメンバーを信じているわけではなかった。それはソイルを含め全員。

けんた 「分かりました。俺がこのサッカーボールを持って下へ行きその辺に歩いている子供にお願いしてみます」

ファンバード「本当か? それならそのほうがバレにくいよな。まあSOILがやったことはバレると思うけど(笑)」

けんた 「ちょっと行ってきますね」

アク  「一人で大丈夫か?」

けんた 「大丈夫だよ。英語が話せるのは俺だけだし。一人の方が怪しまれない」

けんたはお菓子とサッカーボールを持って下へ降りていった。

一同 ≪菓子で、子供を釣るんだな・・・・・≫


けんたがホテルの外に行ってから1時間が過ぎた。

アク 「明らかに遅くないか?」

ユージ「大丈夫でしょ、けんたがAASSのマフィアに狙われる心配はほぼ0だって」

アク 「東洋人がサッカーボール持ってるだけだしね」

カネイチ「でもほぼ0って0じゃないからね」

ダイスケ「大丈夫でしょ。どうせ子供に任せてられないから車が来るまで一緒に待ってるんだ」

アク 「そうか」

アクはホテルの部屋から外を見ていた。

アク 「あれじゃないか? あの黒い車」

ファンバードとミッキーがけんたが用意させたお菓子の残りを食べていたがファンバードがアクの発言に気付き立ち上がるとアクを押しのけ窓から下をみた。

ファンバード「あれだ!」

その瞬間仲間のスパイからファンバードにメールが届いた。

【今着いた車だ】

アク達はそれぞれ外から見えないように気をつけながら窓の下を見る。

ミッキー 「ちょっとー俺にも見せてよー」

ダイスケ 「ちょ、ミッキーどこさわってんだよ」

カネイチ 「おいおい。代わってやるから暴れんなって」


アク   「あ! 子供が車の前でサッカー始めたぞ」

カネイチ 「よくダイナマイト入りのサッカーボール蹴らすよな(笑)」

瞬く間にサッカーボールは車の下にはいった。

子供はボールを取ろうともせずにその場から姿を消しそれを確認したけんたがホテルに戻ってきた。

ファンバード 「良くやった。あとはこのスイッチを押せば終わりだな」

そんなときだった、ファンバードの携帯が鳴った。

ファンバード 「電話?」

ファンバードが携帯を見ると。

ファンバード 「ソイルさんからだ」

ファンバードは携帯を取った。

ソイルが何やら言っているようだがアク達英語が分からないメンバーは何を言っているのか分からない。


けんた 「え? ソイルの親父が狙われたって?」

ファンバードはソイルからの電話を切った。

ファンバード 「大変だ。俺達のボスが狙われた。重症らしい。とっととエーエスのボスを殺さないと大変なことになるぞ」


どうなっているのか今のアク達に分かるはずもなくただ目の前の爆弾の仕掛けられた車を黙って見ているしかなかった。

ファンバード 「そろそろ、出てきてもいいんだけどな」

ファンバードが不安になった、そのときだった。

「カチッ・・・・・・、ガチャ・・・・・・」

カギがかかっているはずのドアが静かに開いた。

AASSのボスを一目拝もうと2部屋、3窓に分かれてサッカーボールの仕掛けられた車を見ているアク達、このかすかな音に気付いたのは普段から警戒しているファンバードだけだった。

ファンバード 「ん? 今ドアが開いたような」

AASSのボスが今アク達のいるホテルの正面にあるホテルに泊まることをSOIL側のスパイから聞いて移動してきたのが昨日の夜だ。

つまり、このことを知っているのはSOILのメンバーでも極少数。


アクとファンバードはメインの部屋の窓で下を見ていた。
メインの部屋にはテーブルの上に地図やお菓子が散乱していてSOILのメンバーもファンバード以外に3人いる。

隣の部屋はベットが2つあり少し大きめのテレビが一台。トイレと風呂場に繋がるっているのは寝室の方だけだ。

ミッキー、ダイスケ、カネイチはアク達の隣の部屋の窓で下を見ている。
ユージ、ゴウ、けんたはミッキー達のいる寝室で見ているがミッキー達の見ている窓とは別の窓で下を見ていた。


ファンバードは後ろを振り返った。

ファンバード 「It is who!(誰だ)」

誰もいないが床に野球ボールほどの青い球が置いてある。

アク 「どうした?」

アクが振り返ったときだった。

「シューーーー!」

という音と共に青い球から白い煙がメインの部屋を白い煙で覆っていく。

アク 「う・・・」

白い煙を吸ったアクとファンバードや仲間3人がその場に倒れた――。

外では何食わぬ顔で出てきたAASSのメンバーがサッカーボールを取り外しボスを車に乗せその場を去って行ってしまった。

ソイルからの急ぎの電話もファンバードが倒れているため出ることが出来ない。


どうしてこんなことになってしまったのか。

---

まず第1にSOILがスパイを送る前にDOLL側からSOILにスパイを送っていた。

それも一人ではない。全部で5人。

SOILのやることはほぼ筒抜け状態だった。

筒抜け状態でもスパイ達は仲間だと思わせるために時にはDOLLが不利になるような作戦にも協力していた。

今回のAASSのボスを狙うというのもいつもソイルのそばで動いていた奴が相手のスパイだったのでバレバレだった。


次にDOLLとAASSが合体するという話がソイルの耳に伝わったときには既にDOLLとAASSが組んだ後だった。


サッカーボールにダイナマイトを入れたことはファンバードのそばにいた相手のスパイから連絡が行っておりそれもバレていた。



---------

作戦が失敗に終わりフランクフルトのホテルに戻った。

アク達が吸った煙は一時的に気絶させるためのもので1時間もしたら意識が回復し体に異常はなかった。
 
ファンバードが必死でソイルに誤っているとソイルの携帯がなった。

どうやらソイルの親父の心臓にAASSの撃った銃弾が命中し病院で死んでしまったらしい。

ソイルはなにやらファンバードに話した。

ファンバード 「ボスが死んだ。今から緊急で幹部が集まる。もうお前達とはここで一たんお別れだ」

けんた  「え? ボスが死んだ?」

ファンバード「ああ、AASSの奴が撃った弾が心臓に命中したんだ」

けんた 「・・・・・・」

ファンバードはボスと親しかったのかうっすら目が潤んでいる。

けんた 「そうですか」

けんたはソイルの方へ近づき何やら話している。

部屋中が重い空気になっていた。


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しばらくしてアク達は外へ出た。


カネイチ「俺達命があっただけでもよかったなあ」

ゴウ  「ああ」


作戦の失敗のせいかいまいちテンションが上がらない。

ダイスケ「ミサキたちと合流してさ、もう忘れようぜ」

ユージ 「そうだね。別に何か損したわけじゃないし」

アク  ≪失敗かあ・・・・・・≫


てきとうにホテルに泊まり日が昇るとミサキ達に連絡しフランクフルトで合流した。


ミサキ 「どうだった?」

アク  「・・・・・・」

けんた 「まあ、プラマイゼロってとこかな」

ミサキ 「なにそれー意味ないじゃん」

カネイチ「そっちはどうだった?」

ミサキ 「面白かったよー。ご飯もおいしいしー」

まどか 「はい。よかったです。これあまりのお金です」

カネイチ「金はいいよ。取っといて」

まどか 「いいんですか?」

カネイチ「いいって」


ユージ 「じゃー、今からけんたの家でも遊びに行くかー!」

ミッキー「おーう!」

無理やりテンションを上げアク達はフランスへ飛んだ。


けんたの案内で寄り道もせずけんたの家へ向かった

アク  「・・・・・・マジかよ。ありえねー」

今まで最悪のテンションだったアクのテンションが少し上がったのはけんたの家を見たときだった。

アク  「これ全部?」

アクが驚くのも無理はない。けんたの家は誰もが想像できないような豪邸だったからだ。

アク達が目にしたのは豪邸というより、城。

カネイチ「こりゃーすげーな」

ユージ 「って奥の方が検討もつかないよ」

言葉でどう説明していいのか分からない。

正面は3メートルほどの門があり塀がずーっと横に広がっている。

門の幅は10メートルぐらいあるだろう、車用に自動で門が開くシステムだとけんたは言うが基本的にけんたの親父の移動手段はヘリコプターだ。

門を潜り抜けると右側に50メートルの四角いプールがあり奥にはテニスコートが見える。

左側は日本では考えられないような車庫がありシャッターは閉まっている。

その車庫の2階には人が住めるようなスペースが設けられているがそこは執事が十数名住んでいるらしい。

プールと車庫の間にはヘリポートがあるがアク達が行ったときにはヘリコプターは見えなかった。

それもそのはず、ヘリコプターは地上ではなく地下に入れてあるからだ。

アク達に気付いた執事の一人が近づいてくるとけんたとなにやら話している。

――。

まどかは自分の住む世界とけんたの住む世界とのギャップに驚いていた。

家の中は当然土足なのだが冬になると床の大理石が暖まるというシステムが作られているのであえて靴を脱いで生活するらしい。

けんたはまだ入ったことのない部屋がいくつもあると言っている。

ミッキー ≪宝くじ100回当てても、この生活できそうにないなあ・・・・・・≫


アク達は30畳ぐらいある部屋のソファーで座ってくつろいでいる。

窓からは遠くに海が見える。

ミサキ 「ピカイチより凄いねー」

カネイチ「チッ。比べんなよ(笑)」

ダイスケ「ここで一生漫画読んでたいなあ」

カネイチ「一生働かなくてもいいって素晴らしいよね」

みんななんかボヤク。

カネイチ「けんたの親父さんはどんな仕事してんだ?」

けんた 「えーっと。詳しくは知らないんだけど、よく博士とか先生とか言われてたよ」

ダイスケ「俺達の想像もつかないとこで仕事してんだな(笑)」

カネイチ「はー。本当に脱帽だぜ」

けんた 「なんかこの前こっち(フランス)の新聞で世界的な大発明したとか書いてあった」

カネイチ「へー。発明家なんだね」

けんた 「分からない・・・・・」

・・・・・・。



けんたの何気ない自慢にも飽きた9人はけんたの家を後にしてフランス料理を食べたり観光したりしてフランスを楽しんだ後フランスから今度は中国へ飛び立った。

けんたの家でけんたがまたマフィアとメールしていたが誰もそのことには触れなかった。


中国へ着くといつものようにホテルを探して重い荷物を置くと準備が整った順にホテルのリビングに集合した。

ミッキー 「今気付いんたんだけどさー。フランスとかドイツでお土産買うの忘れたー。うえーん」

ユージ  「嘘泣きやめろってー。 それに誰のお土産だよ。家族にでも渡すか?」

ミッキー 「自分にお土産」

ダイスケ 「イラネ、イラネ」

カネイチ 「それより心の中に思い出というお土産が・・・・・」

ユージ  「何言ってんだ。全く」

ミサキ まどか「あはは」

ゴウ   「ファラーリとツーショットの予定が・・・・・」

旅の途中だというのに反省会を始めだした。


アク  「わりー、わりー」

ダイスケ≪人が二回同じことを言うときは本当にそう思っていないときがほとんどだ……なんてな(笑)≫

アクとけんたがリビングにやってきた。

アク  「ここ来るときさー。なんか今日祭りみたいのがあるみたいでその会場の場所を聞かれたんだけど俺達も知らなくて困ってたんだよ」

カネイチ「祭りかー。旅の最後には丁度いいかもなあ」

ミサキ 「私祭り大好きなんだよねー」

ミッキー「イエーイ!」

祭りという言葉に反応するミッキー。

けんた 「ああ、やっぱり行くんだね」


中国上海。
日本をはじめ海外の企業が目立つ。

急速に発展したこの街は下からではテッペンが見えないほど高いビルが並びどれも綺麗。

海には大型の船が何隻も浮いている。

夜になれば幻想的とも思える景色が広がり環境客を別世界へといざなう。

――。

夜になった。

祭りを見終えたアク達は夜の上海の街を歩いている。

カネイチ 「昔さーなんか無料で船に乗せてやるっていうのがあったらしくて乗ったやつが帰りは有料とかいってボッタクられたらしいぞ」

ユージ  「あはは」

ダイスケ 「タクシーもメーター誤魔化すとか良くあるんだって」

カネイチ 「くさってやがるよなー」

アク   「まあ、世の中そんなもんでしょ。結局生きていくためには金がいる」

ミッキー 「クール」

ユージ  「偽ブランドとかもう数え切れないほどあるってうわさだ」

ミサキ  「私も良いイメージはないなあ」

ゴウ   「逆にそんな奴等こっちから出し抜いてやらねーとな」

ダイスケ 「おっ。意外な人から面白い発言が」

アク   「俺にちょっといい案がある」

カネイチ 「ん?」

アク   「ミサキさー、なんか欲しいものある?」

ミサキ  「えー買ってくれるのー?」

アク   「いやー。ちょっと試してみたいことがあってさ、欲しいものがあったら買ってやるよ」

ミサキ  「じゃねー。服とピアスとアクセサリーが欲しいなあ」

アク   「どんだけ欲しいんだよ」

ミサキ  「いくらあっても足らないよー」

アク   「んじゃ、まどかもいるな」

まどか  「あ、私はいいですよ」

アク   「遠慮すんなって」


アクはみんなに何をするのか説明することもなくみんなと商店街のようなところへ行った。

アク   「じゃあね、まず……そうだな。ミサキとユージでどこか店に入って店員に聞こえるように『これほしー』って大きな声でいうんだ」

ミサキ  「うん?」

アク   「そしたら俺が行くからあとは俺に合わせてもらえばいい(笑)」

アクは楽しそうだ。

アク   「じゃあみんなはこの辺で待ってて」

カネイチ 「お、おう?」


ユージとミサキはアクセサリーの売っている店へ入っていった。

観光客目当ての店だということはなんとなく雰囲気でわかるし店内には数名の日本人らしき人もいた。


ミサキ  「これー超カワイー。ほしー」

ユージ  ≪……大げさ≫

ミサキがそういうとアクセサリーを大量に身にまとった店員が近づいてきた。

店員   「今ならお安くしておきますよー」

ユージ  「えー日本語できるんですね?」

店員   「昔4年間日本に留学したことがあるから」

ユージ  「へー。でもこれちょっと高くない? 1500って書いてあるけど?」

ミサキ  「高いよねー。確か1元は日本円で13円ぐらいでしょだったら2万ぐらいかな」

店員   「この店オリジナルの服ですからね」

ミサキ  「オリジナルですかー」

そこへアクが入ってきた。

アク   「何してんだお前ら、え? それ欲しいの? それならさっき向こうの店でもっと安く売ってたぞ」

ミサキ  「えーほんとー?」

ユージとミサキは店員をじっと見つめる。

店員   「・・・・・あ、ああ、それじゃないわ。こっちがオリジナルだわ。まだ私この店長くなくて」

ユージとミサキは店を出ようとすると店員に肩をつかまれた。

店員   「1000でいいから買わない?」

アク   ≪来た≫

アク   「これなら600ぐらいでしょ。向こうの店ではそうでしたよ」

アクは適当に言うが・・・・・。

店員   「あら。そうじゃあ600でいいわ」

アクは財布をだした。

アク   「あー悪いね。今500しかない。向こうの店で売ってもらうよ」

3人が普通に店を出ようとすると今度はアクの肩掴んだ。

店員   「500でいいわよ」

アク   ≪楽勝≫

アクは金を払って店をでた。




――。

アク   「でも。実際500の価値あんのかなーこの服それすらあやしいよ」

ユージ  「2000が500でしょ。2万ってことはだいたい5千で買えたってことかー」

アク   「だいたいさー。観光客なんて一日しかいないんだから高い値段吹っかけてくるに決まってるつうのー」

ミサキ  「あーまどかの分買うのわすれたー」

アク   「じゃあまたどっかでやろっかー。値引きはやりだすと楽しいよ」

ユージ  「なんかちょっとネットオークションに似てるなあ」

アク   「あー、ちょっとだけね」


カネイチ達にも話すとなんか面白そう、という話になりみんなでやりまくった。


本物か偽者かそんなことは置いといて飽きるまで値引きを繰り返した。
どうせもう来ないんだからと。




それから韓国へ行き予定通り焼肉を食べた。

焼肉を食べ終えホテルに戻るとアクがみんなを集めた。

アク 「そうだ。言うの忘れてたんだけど。靴が欲しい」

ユージ「靴?」

ダイスケ「なるほど……」

カネイチ「なるほど?」

アク 「気付いた人もいるとは思うけど犯罪するとき、靴の足跡とか見られるかもしれないから。フェイクで」

カネイチ「んー」

ゴウ 「なるほどねえ」

ミッキー「フェイク……俺敵にはシェイク飲みたいなあ」

一同 ≪まだ食うのかよ……≫

ミサキ 「どうせなら手袋とかも買っちゃえば?」

アク  「手袋は普通のでいいでしょ」

カネイチ ≪さっきあれだけ焼肉屋で騒いでたのに犯罪のことはしっかり考えてんだなぁ≫


翌日、アク達は韓国製の靴を一人一足ずつ買い日本に帰国した。

――。

今回の旅行のまとめ。

結局金は余った。

マフィアとのちょっとしたコネができた。

けんたの家が見れた。

世界の広さを知ることができた。

上には上がいるということの実感。

韓国製の靴購入。

チームワークの向上。

韓国の焼肉は上手い。

旅行期間は15日。

15日でも一ヶ月ぐらい旅行していた気分。



――。

アク達が日本に着いたのは夕方。

空港から家に帰るともう辺りは真っ暗でふと見上げた東京の空は汚れていた。




そして、翌日、ピカイチに集合した9人はとーるを呼び出した。

とーる 「帰り早かったなあ」

アク  「ああ」

とーる 「なんかアク前より大人っぽくなってない?」

アク  「そうか? まあいろいろあったからなあ。精神的に鍛えられたよ」

とーる 「あーそうだ。こっちも仲間集めといたぜ」

アク  「お? いいやついたか?」

とーる 「任せろって」

けんた 「まあ、俺達はマフィア仲間にしてきたけどな」

ユージ 「結局あのあとどうなった?」

けんた 「ああ、ソイルがそのまま後継いでトップになったって」

アク  「アハハ……(苦笑)」

カネイチ「そりゃ笑うしかねーな」

けんた 「SOILにはソイルの親父の昔からの知り合いで4,50の幹部が何人もいるらしいんだけど、結局ソイルももういい年だから任せるって」

アク  「大変だよなー。それはそれで」

とーる 「なんのこと?」

けんたがとーるに事情を話した。

とーる 「マジかよ。 それありえねー」

アク  「それがありえるから怖いんだよ」

とーる 「マフィアのトップと知り合いってヤバすぎるだろ」

アク  「それが意外といいやつなんだって。話してないけど」

けんた 「あはは。アクは良い目をしてるって言ってたよ」

アク  「目かー」

けんた 「なんか俺達みたいに闇に住んでる目だって」

ミッキー「なんかカッケー」

アク  「本当かよ。俺二重だしね」

ダイスケ「そういうことか?」



・・・。

久しぶりにとーると会った9人は雑談をしながらも犯罪に向けての話を進めていった。

アク  「とーるさー。そういや新しい仲間ってどんなやつ?」

とーる 「ああ、呼ぼうか?」

アク  「今から呼べるの?」

とーる 「おう。ちょっと待ってて」

とーるは電話するためにピカイチの外に出て行った。

アク  「どんなやつかな?」

ユージ 「手品師とかカッコいいよね」

アク  「手品で犯罪かーいいねー」

カネイチ「どうやってとーるがそんなやつと知り合んだよ(笑)」




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