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完全犯罪 〜ゼン〜 2部 2ページ目

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ヒコ助 「・・・」

キョウ 「おいっ!なんとか言えよ!」

ヒコ助 「・・・ノートを返して欲しければ一人で1億持って四星デパートの地下駐車場まで来い」

「ブチッ」

電話が切れた。


キョウ 「いつだよ・・・」

スケさん「どうします?」

キョウ 「そうだなー。どうせノートは燃やしたりしないだろうからほっといてもいいんだけどな」

キョウは余裕な顔でそういった。

キョウ 「それでもヒコ助一人でやってるようには思えないから一応今から行ってみるか」

スケさん「お一人で?」

キョウ 「おいおい、俺車乗れないぞ。スケさん運転で俺トラックにでも隠れてるから」

キョウは何か楽しそうだ。


他の執事達は心配そうにキョウに話しかけてくるがキョウは聞く耳をたてずスケさんと共に四星デパートへ向かった。


車内。

スケさん 「一応、偽1億円は用意してあります」

キョウはまだ運転するスケさんの隣に座っている。

キョウ  「何も心配要らないよ、ただノートを取りに行くだけだから」

キョウは相手がヒコ助だと確信を持ててから何か遠足に行くような気分でいた。

キョウ 「ヒコ助と会うの久しぶりだなー」





しばらく車を走らせると四星デパートが見えてきた。

キョウ 「よし、後ろのトラックに隠れるからちょっと車止めてくれ」

スケさんは車をゆっくり道の端に止めるとキョウはトランクに入った。

キョウ 「中から開けれるように少し隙間開けとくぞ」


スケさんはキョウがトランクに隠れたのを確認するとゆっくり車を四星デパートに向かわせた。

キョウ 「いてててて、トランクの中って意外と揺れるんだな」

キョウはトランクから少し見える隙間から風景を見ていると

車は四星デパートの地下に入っていった。

キョウ 「いよいよだな」


スケさん ≪あれ、車の数が少ないな・・・それに何台かあやしい車もある≫

スケさんは車を周りに他の車が止めてない場所を選びバック駐車して止めた。

少し待っていると・・・


「トン、トン」

と、スケさんのいる運転手席側の窓を叩く音がした。

ヒコ助だ。

ヒコ助は顔を隠すことなくスケさんの目を見ている。

スケさんはそっと窓を開けた。

「ウイーーーーン」

スケさん 「ヒコ助さん?」

ヒコ助  「助けてくれ」

スケさん 「え?」

ヒコ助  「仲間に裏切られそうなんだ。ノートは奴等がまだ持ってる」

スケさんはヒコ助の弱気な態度に不信感を抱いていたが・・・。

スケさん 「もうちょっと詳しい話を聞かせてくれ」

ヒコ助  「ああ、周りの車は全部俺達の仲間だ。俺達のことを見てるはずだからあまり時間を掛けれないがとにかくヤバイ奴等なんだよ」

ヒコ助の額からは演技では出せないであろう汗が出てきている。

スケさん 「とくにかくヤバイってどういうことだよ。お前達がヤスを殺したんだろ?」

ヒコ助  「俺じゃない。俺が知らない間にあいつ等が・・・」

スケさん 「待て待て、あいつ等って何人いるんだよ?名前とかあるだろ?」

ヒコ助  「俺が知っているのは6人。でもまだ仲間は結構居そうだ。俺も仲間になってからももう4人殺っている。とにかく今売り出し中のヤバイ組織なんだよ」


スケさんはなんでそんな危ないところにヒコ助が仲間になったのか疑問に思ったが純情ではない汗と全身がかすかに揺れていることで命がけの助けを自分に求めているのだと思った。

スケさん 「とりあえずこの場所から離れたほうがいいな。坊ちゃんも今この車のトランクに入っているし」

ヒコ助  「え?坊ちゃんが・・・」

スケさん 「とりあえず車に乗ってこの場所から離れたほうが良いな?」

ヒコ助  「それじゃあノートが・・・」

スケさん 「今の話を聞いているとどうも1億渡したって戻って来そうにないからいいだろ。命のほうが大事だ」


ヒコ助は嬉しそうな顔をした。

ヒコ助  「ありがとう」

そうしてヒコ助が急いで助手席の乗ろうと車の前を通り助手席のドアを開けようと手を伸ばした。

その瞬間!


「バンッ!!!」


スケさん 「え?」

遠くから「バン!」という音が鳴ったと思ったらヒコ助の胸から血が噴出していた。

ヒコ助  「うう・・・。スケさん逃げ・・・ろ・・・」

スケさんは何のことか分からなかったが危険だと感じ車を出そうとしたが・・・次の瞬間。

「バンッバンッバンッ!!!」

・・・地下駐車場入り口の方から銃弾が飛んできて助手席側の窓を貫通しスケさんの頭と胸に銃弾が当たった。

スケさん 「ぐはっ・・・。坊ちゃん・・・」

スケさんは意識を失った。







男 「ばかやろう。服に盗聴器を付けてあるのも知らずに仲間を辞めるだと。せっかく仲間にしてやろうと思ったのに」

男は出入り口付近に止めてある大きな車の窓からスケさんとヒコ助を撃ったのだ。

男の電話。

男 「もしもし、あいつ逃げようとしたから殺ったぞ。今から1億取りに行く。死体は放置だ」

謎の男 「見てたぜ。さすが元チャンピオンだな。たった四発で殺っちまうなんて」

男 「四星デパートだけにな」

謎の男 「あははははははは」

謎の男大爆笑。




一方車のトランクにいるキョウは・・・。

キョウ 「あれ車動かないな」

キョウはスケさんとヒコ助の会話を耳をすませて聞いていた。

キョウ 「爆竹が破裂するような音がしたがここで俺出て行ったら一人で着てないことばバレてまずいんだろうか・・・」

キョウはそうは思ったものの車で逃げるとスケさんが言ったのにもかかわらず車が発進しないのを不思議に思った。

キョウ 「ちょっとしゃがみならが運転席に行ってみるか」

キョウはあらかじめ半ドア状態にしておいたトランクからそっと降りて軽くしゃがみながら運転席に近づいた。

キョウは運転席にまで近づくとスケさんの顔を見るために立ち上がった。


キョウ 「え? は?」

キョウの目の前でスケさんは頭と胸から血を流し気絶していた。

キョウ 「え? え? え? どういうこと?」

キョウが意味も分からず助手席のほうを見ると窓が割れており・・・その隙間からか。ガタイの良い黒のスーツを着た男がこっちに向かって歩いてきているのがわかった。


キョウ 「うそ? え? まじ?」

キョウは戸惑いながらも運転席側のドアを開けた。

キョウ 「スケさん!!!おい!!しっかりしろ!!」

スケさん「うう・・・坊ちゃん。逃げて・・・」

スケさんは頭に銃弾を食らったがまだ意識があり呼吸もかすかだができていた。

キョウ 「バカやろう。救急車呼ぶから待ってろ」

キョウはスケさんの持っている携帯電話をスケさんの服のポケットから出すと電話を掛けた。

キョウ 「もしもし、四星デパートの地下駐車場1階にすぐ救急車を」


と、言った瞬間。キョウの前を歩いてきている男とはまた違った男がキョウを後ろから掴んだ。

キョウ 「おい!誰だよ、何してんだよ!離せよ!」


男   「こいつを助けたいのなら黙れ」

キョウ 「は?」

次の瞬間男はキョウのクビに手刀を食らわすとくねったキョウに対し腹にアッパーを食らわした。

キョウ 「うお・・・」

キョウは気絶した。



それから数時間後。

キョウは目を覚ました。

キョウ 「ここどこだ・・・」

キョウは辺りを見渡した。
薄暗い部屋の中に男が一人とベットに上向きに寝ているスケさんがいた。

男   「起きたか」

キョウ 「・・・」

男   「ヒコ助は死んだ。こいつはまだ生きている。本当にしぶてーおっさんだ」

キョウ 「スケさん!」

スケさん「ううう・・・」


男   「こいつを助けたいのなら俺の話をよーく聞くんだ。俺のいうことさえ聞けばこいつは助けてやる」

キョウ 「え?」

男   「なんだ?助けて欲しくないのか? こんなやつあと一発撃てば余裕で死ぬんだぞ」

キョウ 「・・・どうすればいいんだ?」

男   「とぼけるなよ。1億円だよ。あのケースには20万しかなかった。どうしてもこの組織をでかくするために1億円必要なんだ」

キョウ 「金か・・・」

男   「金だ。用意できるよな?」

キョウ 「そりゃ親父の口座に手を付ければ」

男   「よし、取引だ。このおっさんと1億」

キョウ 「ちょっと待てよ、ノート返せ」

男   「は?」
男はふところから拳銃を出した。

男   「ノートが欲しいか? だったらもう1億だ。2億持って来い」

男の持っている拳銃の銃口がキョウの方を向いた。

キョウ 「2億・・・ですか」

キョウは日本の親父の口座には1億しか金がないことを知っていた。海外での仕事が多かったので金は海外の銀行に預けてあるのだ。

キョウ 「わかりました」

男   「わかってるとは思うがサツに言ったり他の奴等にいったらこいつは死ぬしお前の親父の形見でもあるノートも燃やすからな」

キョウ ≪・・・ちくしょ・・・≫

キョウは言われるようにするしか方法がなかった。


男の仲間に連れられてキョウは家に帰った。

執事達がキョウの帰りを待っていたがキョウは何もいわず親父の通帳と印鑑、クレジットカードを持って家からでた。

執事  「そ、それは大事な通帳では?」

執事達が何を言おうともキョウは一言も話さず男の仲間の車に乗った。

車に乗るとキョウは男に目隠しをされスケさんのいるところまでまた運ばれた。

部屋に着くと。

キョウ 「この通帳には1億円がある。これでスケさんを返してくれ」

キョウがそういうと男は通帳をみた。

男   「確かに1億あるな、あんな短時間で小細工もできまい」

そういうと男はスケさんのそばから離れた。

男   「で、もう1億はどうした?キャッシュか?」

男は笑っている。

キョウ 「悪い。今はない。そのノートを海外の有名なマジシャンか富豪に売れば1億以上の値段で買ってくれるはずだ。好きなように」

すでにキョウの目は死んでいた。もうどうにでもなれと、いったような感じだ。


キョウはスケさんを背負って部屋から出ようとした。

男  「待てここがどこだかバレたらまずいんだ。送らせる」

キョウはまた男の仲間の運転で今度はスケさんと共に家に帰った。


執事達がキョウを見つけるとすぐさま飛んできた。

キョウ「スケさんを頼む」

キョウは一人屋敷の二階に上がるとそれから一週間執事達の目の前に現れることはなかった。



キョウ ≪くそ・・・ノートは戻らない・・・スケさんは重症・・・ヒコ助は死んだ・・・。金も取られた・・・。俺が安易に動いたからこうなったんだ・・・≫

悔やんでも悔やんでも、涙をいくら流してもキョウの心は収まらない。

キョウは一生分の涙を流すかのような勢いで一週間泣いた。

5月になったがキョウは学校へはいかず家にいた。誰とも話したくないし顔を合わせるのすら嫌だった。


執事の作った食事がキョウのいる部屋の前に置かれる、それをキョウは食べる。食器を置くと執事がしばらくした後食器を取り来る。

執事の心遣いにも気が引けていた。

そんなキョウはある日夢を見た。キョウが親父に手品を習っている夢だ。

キョウパパ 「いいか。絶対に諦めたらだめなんだ、どんなに難しいマジックでも必ずできるようになるんだから」

キョウパパの暖かい言葉。諦めてはいけないという単純な言葉だ。

ただ・・・そんな単純な言葉も今のキョウは忘れていた――。


キョウが目を覚ました・・・。



キョウ 「・・・このままこうしてたってしょうがないじゃないか。 取り返すんだ。ノート」

キョウが一人で部屋にこもってから3週間が過ぎ去っていた。

キョウは螺旋階段を3週間ぶりに降りると外の明るい光がリビングを照らしていた。

キョウ 「1から出直せば良いんだ。父さん必ず迎えにいくよ」



キョウの目に力が戻った。


そのとき玄関から執事が一人やってきた。


執事 「坊ちゃん!」

キョウ「おお。ノート取り返しにいくぞ!」

執事 「おおお。今すぐ他の執事達を集めますね」


しばらくすると執事達が全員集まったスケさんはまだ病院でリハビリをしていたが。


キョウ  「みんなよく聞いてくれ。俺はノートを取り戻すために死のうと思う」

執事一同 「え?」

キョウ  「だってよ。相手だってやっぱ俺が恨んでると思っていると思うんだ。だから・・・」

執事A  「でも死んだらそれまでですよ?」

キョウ  「違うって戸籍上から消えるだけ。次会った時あいつ等を驚かしたいんだ!」

執事B  「それでも戸籍上から消えるってことは・・・不便な生活になると思いますが」

キョウ  「大丈夫だってまだ親父の金だってたくさんある」

執事A  「そういう問題ですか?」

キョウ  「なんかさー。俺このまま普通に高校生やってても、もうなんか身が入らないっていうか・・・」


・・・キョウのムチャな考えを止めようと執事達は必死に説得すること1時間。



キョウ  「もう決めたんだって! どうせ家族ももういないしさ。俺はプロのマジシャンを目指しながら楽しく生きるよ」

執事B  「だからープロのマジシャンも戸籍に名前がなかったらできないでしょ」

キョウ  「戸籍に名前があるなしなんて関係ないんだって。とりあえずどこに売られたか分からないノートを取り返してそのマジックを大勢の人の目の前でやりたいんだ!」

キョウの決意は固まっていた。

執事A  「・・・」

キョウ  「それに俺が生きてるってことはまたあいつ等が俺に金を出せと脅してくるかもしれないしさ」


執事達も疲れてきたのか・・・。
何を言っても意見を変えないキョウの決意に反対することも無駄なように思えてきた。


執事B  「私達は坊ちゃんのお父さんに坊ちゃんを任されてるんです!戸籍上から名前が消えるなんて耐えられない」

キョウ  「だから別に死ぬわけじゃないんだからいいだろー。俺はこの家から出るけどまたいつか帰ってこれるように策を練ればいい」

執事B  「策ですか?」

キョウ  「例えばそうだな。俺の死に方次第でどうにかなるでしょ。登山で遭難して10年戻ってこないとか。それで死んだことにしてそっからさらに10年後帰ってくるとか」

執事A  「なんですか・・・それ?・・・」

キョウ  「とにかく俺の死体は無しで葬式やればいいんだよ」

執事B  「そんなことできるんですか?」

キョウ  「みんなが俺を死んだことにすればいいんだって」



生きているのに死んだことにする・・・。

そもそも雇われの執事達がいくらキョウを説得しても押さえ込まれてしまう。

キョウはそれから3時間ほど執事達を説得した。





3時間後・・・。

キョウ 「じゃあみんなに1億ずつ渡すからそれでいいだろ?」


キョウの親父の収入は一回のコンサートで数千万とも言われていたので軽く10億は金がある。


キョウ 「じゃあ明日海外の銀行から日本の口座に金移すから。それやったらおれの死に方考えよう」



キョウにとって金なんてどうでもよかった。

「執事一人に1億円渡す」というムチャなことを言い出してからは執事達も満足したのか反対する意見も少なくなった。


キョウ 「じゃあまた明日。今日はもう遅いから寝よう」




翌日。キョウは予定通り海外の口座になる金の9割を日本の銀行に移す手配をした。

キョウ 「まさか50億もあるなんてな」

キョウはニコっと笑った。



キョウは夏休み明けの文化祭で事故死として死ぬことを決めていた。


それからキョウは予定通り金を執事達に渡たした。


キョウ 「・・・なんか生まれ変わるって感じだなー」

キョウは学校へはいかずやりたいことを好き勝手やっていた。

時は流れ8月。夏休みに入るとキョウは学校へ行った。

先生にはヒドく叱られた。が、キョウは学校をやめると決めていたので全然平気だった。


先生を説得するのは大変でマジックを文化祭でやりたいというと学校に来ない奴にはさせれないと言われてしまった。

キョウは「そうですか」と言ってそのまま家に帰ると文化祭が終わったその日に近くの大きい公園を借りてマジックを披露することに決め執事達とマジックの打ち合わせをするようになった。

キョウ 「最後ぐらい豪華に行くぞ」

と、いうことでマジックには2000万円もの費用を要した。



どんなマジックかというと。

両手両足をしばったキョウがカギのかかった箱から脱出するというもので制限時間が過ぎるとその箱には爆弾が仕掛けられていて爆発するというもの。



もちろんわざと失敗したように見せて登場するのが基本だが、今回のマジックは本当に失敗するように見せて「現れない」というものだった。

そこで執事達が本当に失敗したかのように演技して救急車や消防車を呼ぶ。

爆発はハンパなものではなくキョウは跡形もなく消えたということにして「死んだ」と見せかけるというものだった。




キョウ 「10年後とかに俺がまたみんなの前に現れたときはみんな驚くんだろうな」

キョウは楽しそうに笑った。




そうして9月に入り学校が始まるとキョウは学校に行くようになり文化祭のあとに公園でマジックをすると生徒みんなに言った。


そして9月15日文化祭当日。

キョウは前日までにすべての準備を整えて学校に向かった。

学校では「楽しみにしてるね」などたくさんの応援してくれる声を聞いた。


そして文化祭も終わり学校が終わると生徒達はそのままキョウが言っておいた公園に集まってきた。

午後7時30分。

なぜか、キョウの行っている学校の生徒だけではなく近くの住民やマスコミなんかも集まっていた。

午後8時。午後8時スタートと言っていたキョウであったがあまりの人の数にスタートすることさえままならなかった。


数えてみればざっと2000人。

人が人を呼び。花火大会でもあるのか?と言ったような感じで人が集まっていった。
時間が経つほど人が増える。

見に来た人も大掛かりなセットが用意してあるので本当に何かあるんだなといったような感じでどんどん人を呼ぶ。






午後8時30分。

2800人ほど集まってしまった。

キョウ 「これ・・・逃げるとこ誰かに見つからないかな・・・」

キョウはそっと車を用意しておりマジック中にそれに乗り込みそのまま逃げてしまう予定だった。

キョウ 「まー大丈夫か、2800人でも1万人でも・・・全員マジックのセットに注目してるから」



そうしてキョウのマジックが始まった。

気がつけば警察もやってきていた。


キョウはマイクを使い。

キョウ    「みなさんどうもー。今からプロもビックリするような漫才しまーす」


学校の生徒達 「えーーーーーー」


というキョウの軽いボケからマジックは本格的に始まった。



執事二人がキョウの両手両足に手錠をかけキョウを頑丈そうな箱に入れた。


見物者達が見えるように大きなタイマーがありそこの時計が1秒ずつ減っていく。

5分にセットしてあったタイマーが残り4分50秒に。


箱の横には「音」を取るために高性能のマイクが用意されており「ゴトゴト」と音が取れているように見せているが実は偽のマイクで音はあらかじめ録音されているものだった。



そしてキョウはすでに箱の中にはいなかった。

箱に入ったと見せかけて箱の下から用意したセットの下を潜り抜け残り4分50秒のときにはすでに車の方へ走っていた。

キョウは執事に「あとは任せた」と一言いうと執事は一礼した。
そのままキョウは車に載るとスケさんの運転でその場を去って行った。


音はあらかじめ録音しておいたものを流しているのでまだ残り4分までにはずっとガタガタと音がしていた。


「ヤベ・・・。ちょはずれない!!!」


あらかじめ録音しておいたキョウの声が見物者全員に聞こえた。

見物者は「うそだー」みたいな感じで誰も信じなかったが執事達は演技をした。

執事  「やばい!!」

マイクを使わず臨場感あふれる演技をする執事達。

執事の一人がキョウの入っていると思われる箱に近づくとあらかじめ用意しておいた爆弾を爆発させセットの一部が燃え始めた。

執事  「はやく!消防車あああーー!!」


あらかじめ用意しておいた音声からは


「マジやばい。助けてくれ。失敗だ!熱い熱い!」

とキョウの声が消えてくる。

さすがにそうなると見物者たちも「キャーーーー」という悲鳴を上げ始めた。

そして残り1分。

爆発が引火したように見せ掛けどんどんセットが燃えていく。


消防も水をかけるがそんな水ではびくともしない!

とうとう5分が過ぎ箱の隣に付けてあった大きな爆弾が爆発した!!!

「ボカーン!!」


という爆音とともに見物者たちは悲鳴をあげた!!!

「キャアアアアアーーー!」

女子生徒が泣く。

本当に失敗したと思っている人半分。まだ全てマジックだと思っている人半分。


そこで執事がマイクを使って一言。

執事 「すいません。本当に失敗しました」



その一言で信じていなかった見物者がマジなんだと思い込んだ。


それから1時間後ようやく全ての火が消えた。


・・・。

セットは真っ黒。

頑丈そうな箱も跡形もなく・・・。

執事達は泣いている。

その状況をマスコミは写真やビデオにとっていた。

警察は執事全員に事情聴取をしていた。

生徒達はみんな泣く。




一方キョウは。

キョウ 「あははは」

と、車の中でノンキにコントビデオを見て笑っていた。



翌日。新聞やテレビでキョウのマジックの失敗を取り上げられキョウは”死んだ”ことになった。
そのニュースは当然キョウからノートを奪った組織にも伝わった。

その日に通夜が行われた。


キョウは自分の通夜がどうなっているのか気になってフルスモークの車の後部座席からそっと自宅の庭を見ていたがあまりにみんなが泣いているので生きているといいたくなりそうだと思ったのでその場をあとにした。


その車を発進させると前から走ってくるゼンとすれ違った。


---
ゼンの帰り道。

ゼン ≪はーあ、葬式かーできれば見たくなかったなー≫

ゼンは走って家に帰った。


そして大きな変化もなくゼンは高2になった。

高校の学年成績はゼンはいつも5位以内でちえはいつも3位以内。

ゆきはいつも100位〜60位ぐらいをウロウロしていた。

ゆきは探偵になるとはっきり自分の夢を親にいうと

「バカじゃないの? そんな漫画のようなこと言わないで」

と親に叱られたがゆきの探偵になるという夢は鉄のように固かった。


相変わらずゼンとちえは付き合っていて仲が良かった。



たいした事件も起きず平和な日々は続いた。

事件があったといえば学校の女子更衣室を変なおっさんが除いていたということだったが犯人も捕まることなく除きも無くなったので自然と忘れ去られていったことぐらいだ。


毎日を一生懸命生きるゼン。毎日剣道の練習で汗をかき、テレビも見ずに勉強する。

ゼンの一日の流れはだいたい決まっていて、
朝6時起床。軽く外をランニング。学校へ行く、部活を一生懸命やり午後7時に帰宅。
風呂に入って家族と一緒に夕食。母親の家事の手伝いを20分ほどして8時からテレビも見ずに勉強。

午後11時〜11時30分腹筋を100回やった後寝床につく。

日曜日はちえやゆきと電車を使い都心へ行って遊ぶこともあったがそんなに頻繁に行くことはなかった。

そんな生活をして時間は過ぎ去っていった。


8月末。


夏休みということもあってゼン家はハワイへ家族旅行に行くという計画があったがゼンの父親の仕事が忙しくそんな計画はもろくも崩れ去ったある日。

ゼンはちえと二人で初めて海へ行った。

湘南。 遠くでサーフィンをしているグループを浜辺で見ながらゼンとちえは良い感じで遊んでいた。

ちえ 「残念だったねー家族旅行ハワイだったんでしょ?」

ゼン 「はい。でもこうやってちえさんと海に来れて良かったです」←相変わらず敬語。

ちえはゼンの敬語に対してツッコミを入れることももう無かった。

ちえ 「今度はハワイ行こうね?」

ゼン 「え? 二人でですか?」

ちえ 「うん。ずーっと先でいいから」

ゼン 「はい」


そんなラブラブムードのデートは終わりゼンはちえを家まで送ると一人帰宅した。


ゼン 「ただいまー♪」

ゼンは機嫌が良かった。


ゼン父「おい! ゼンこっちこい!」

ゼン 「どうしたんですか? 先にお風呂入りたいんですけど」

ゼン父に言われるままにリビングに行きテレビを見ると・・・・・・。

ゼン 「うわっ! ハイジャックですか?」

ゼン父「そうだ。 エジプトに向かうハズだった飛行機がハワイに向かってるそうだ」

ゼン 「えええ・・・間逆じゃないんですか? 燃料はあるんですか?」

ゼン父「さーな。燃料はあるんじゃないか。ムチャしやがって。俺が飛行機に乗っていたらとっ捕まえてやるのに」

ゼン父は拳を力強く握っていた。

深夜3時。

飛行機はハワイに着いた。

ゼンは風呂から上がるとずっとテレビを父親と見ていた。しばらくすると

ゼン父 「おおお。4人出てきたぞ!」


ゼン父の見た4人は正しくアク達だ。

アク、ユージ、ミッキー、ダイスケ。


ダイスケがテレビのリポーターの質問に答える中ダイスケの後ろではミッキーが飛び跳ねたりしてはしゃいでいたがすぐにユージに頭を叩かれテレビの画面から姿を消した。

ゼン父 「後ろに馬鹿がいるなあ。日本の恥さらしが」

ゼン  「他の乗客は大丈夫かな・・・・・・」

ゼンの心配する中飛行機は乗客4人を下ろしたまま飛び立って行ってしまった。

ゼン  「え? なんであんな若い人が出れて老人や子供が出てこないんだろう」

ゼン父 「分からんな・・・。何をしているんだ。あっちの警察は」


それから数時間後飛行機は海に落ち乗客は奇跡的に近くを通りかかった貨物船に助けられ全員無事だった。



翌日の学校ではミッキーの話で盛り上がっていた。

生徒A 「なー昨日のハイジャック凄かったよな。出てきたやつの一人が後ろで飛んでたし」

生徒B 「うんうん。あれは面白かった。今まで死ぬかもしれない状態であっただろうによくあんなテンションでいられるよな」

生徒A 「テレビに映ってるってこともわかってやってたはずだし。一度あんなやつに会ってみたいもんだ」

生徒B 「でも隣でそいつに頭叩いたやつもなかなかツッコミとしてはセンスあると思うよ」

生徒A 「あはは」



そんな話題も一週間も経てば誰も話さなくなった。


そしてさらに時間は過ぎ10月1日。

カネイチたちが起こした101事件が起きた。


午後7時ゼンが学校から帰ってくるといつもいるはずの父親がいなかった。

ゼン 「あれ 父さんは?」

ゼン母「なんか大きな事件があってさっき出掛けたわよ」

ゼン 「父さんが行くってことは結構大きい事件ですかね」


ゼンはそういってテレビを付けた。


大地震が起きたかのような風景が映っている。

銀行だ。

ゼン 「あれ今日地震ありましたっけ?」


テレビ画面の右上に被害総額10億円と書かれてある。

ゼン 「死者も何人か出ているって? え? 全国同時で銀行強盗?!」


次々とテレビから情報が流れくる。ゼンはその1つ1つを信じることができなかった。

ゼン 「なんてことを・・・・・・」

テレビには爆弾の爆風により右腕が骨折した人や救急車で運ばれる人爆弾を投げた犯人の人影が防犯カメラの映像で映っていた。

ゼン 「信じられない」

ゼンは今までにない多きなショックを受けたが今のゼンはただテレビの前でその光景を見ることしかできずゼンの目からはあまりの悲惨さのため涙が流れていた。


ゼン 「父さんがなんとか犯人を捕まえてくれるだろう!」


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