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俺は死んだ byあくぼう

3年後の自分になって書いてみる。リアルすぎるが当然妄想です。フィクションです(´・ω・)



 俺は死んだ。いや医学的には死んではいない。心臓はちゃんと動いている。
脈を打っている。呼吸もできている。
青空を駆け巡る鳥たちの囀り(さえずり)、ちゃんと聞こえる。

ただ俺は死んだ。医学的には死んではいないが・・・・・・。

 夢が無くなった。今は実家の近所にある工場で朝から晩まで働いている。
その工場はまるでお化け屋敷。歩けばホコリがたち俺にホコリがかかる。

 こんなハズではなかった。夢は見るものではなく叶えるものだと思ってた。
大学3年生のときゼミの先生から就職先を聞かれた。どんな職種を希望しているのかと。
そのときはまだ俺は夢があった。人に言ったら笑われる。ゼミの先生にも言えなかった。
「IT関係の仕事に就きたいです」
俺は言った。先生はちゃんと就職したい場所があるのは良い事だと俺を誉めた。

嘘だった。とっさに付いた嘘。とりあえずその場を凌ぎたかっただけだ。


 俺は明日も工場へ行く。行かなければ上司に叱られる。親に叱られる。

行かなければいけないのは分かっている。お金を貰っている。

あの工場へ行くと俺は死ぬ。生きている感じが全くしないのだ。

ひたすら流れてくる部品を組み立てる。俺はロボットか――。

21世紀のこの時代に俺は何をしている。

朝6時に起きて前日買ったパンを食べ時間があればコーヒー。
作業服を着る手の速度は心なしか遅い。着たくない。人の下で働くということは今まで無かった。
あ、一度だけあったかコンビニでバイトをしたことがあったんだ。でも店長が嫌いで1ヶ月もしないうちにやめた。
それ以来人の下で働いていない。大学生の俺は気ままにやってた。好きなことを好きなだけできた。
生まれてきて一番自由があったときだ。
親や先生に叱られることも減り自由だった。講義には出なくても誰にも何も言われない。

まるで日光猿軍団から抜け出した猿。

人間の言うことを聞かなければ食事もできず叩かれる。

高校生までの俺はその猿だったのかもしれない――。


小学生のときからだろうか。夢を持て、少年よ大志を抱け。
漠然とした夢。小学生の俺達にはどんな職業があるのかさえ分からず・・・・・。

「大工さんになりたい」そんなことを言った経験もあった。
今思えば言わされていた――。


中学へ入っても言われた。10年後の自分が何をやっているのか
10年後の自分に手紙を書け。
「まだどんな仕事にでも就ける」そう言われてた。
中学3年生になりここで夢が1つ2つ消えて行く。

自分の才能を知る。限界を知る。
どうもスポーツ選手にはなれそうにない。


高校が決まり自分のレベルが決まる。近所に住んでいる人たちの目が変わる。

「あの子はそこの高校行ってるんだって」

高校へ入った。偏差値で言えば40〜45ぐらいか。
最初に言われた言葉は「1からやり直そう」

・・・・・・。

え?何?俺達が失敗してきたみたいな言い方。

ここからまた始めようってか。それが出来る人間ならここにはいないよ。

高校へ入るとさらに夢が消えた。

今度は1つ、2つってそんなレベルではない。
10、20消えた。
医者、弁護士・・・その辺の職業が片っ端から消えた。
残ったのは歌手とか・・・芸能人・・・

一攫千金を夢みる職業で一番手っ取り早い夢。

でもそんな夢、俺達のいるバカ高へ入ったら奴は叶えられない。
叶えるには学校を辞めそれに向かって一直線に走るしか他ない。

高校の面接で夢を聞かれた。

「今のところ夢はありません。高校で見つけたいです」

高校では見つからなかった。忙しすぎて見つけられなかった。
ギャンブル、恋愛、遊び・・・。

明日の予定すら立てられない俺達が5年後10年後の夢が見つかる訳無かった。

高3になり先生もリアルなことを言うようになる。

「あそこの会社はどうだ?給料も悪くないし」

「じゃああそこはどうだ?こっからだと近いから家から通えるぞ」


あの言葉。ふと思い返す小学生のとき夢を持て大志を抱け。

あのとき俺達に言ったのは嘘なんだろう。

面接で夢を聞かれたのは聞くことがなかったから聞いたんだろう。


俺の夢を聞かずに就職先を言ってくる先生に腹が立った。

「大学へ行きます」


「え、でもお前就職組みだろ?」


「今からじゃあもう無理なんですか?」


「無理ではないが」

次の日から進学クラスで勉強することになった。


逃げた。夢は無いが働いたら終わったような気がするから。

就職することは夢を叶えられず終わるということ。

進学すればまた4年間という「時間」が与えられ夢が実現できる可能性がでてくる。

俺は必死に勉強した。生まれてきて始めて真面目になったのは高3の秋〜冬。


県内の金さえ払えば誰でも受かる私立大学の合格が決まった。

それなりに嬉しかった。また4年間の有余が与えられた。


大学生になって俺はまた間違いを繰り返した。

高校生になって最初していたギャンブル、恋愛、遊び・・・


車があったので行動範囲が県外へまで広がった。

夢は見つからない。大学生にもなると自分の力がどれだけのものか教えられなくても分かる――。


成人式。中学のやつらと顔を合わせた。
有名大学へ行っているやつ。就職しているやつ結婚しているやつヤクザになったやつ。
学校の先生。みんな集まった。それぞれ道は違うけどみんな笑って再会を喜んでいた。


車で大学へ向かう途中道路整備をしている30ぐらいのおっさんを見かける。

俺に赤い旗を向け一礼。白い旗を振り一礼。

「お前それでいいのか。それがお前の望んだ人生なのか」

俺は見かけるたびにそう口ずさんだ。


まさか自分がこの世の終わりとも思えるあんな工場で働くことになるとは思いもせず。


世界は誰のためにあるのか。地球規模で考えた。

工場で働く俺。そんな俺のために地球は回っているとは到底思えない。

スポットライトにあたり歌を歌ってみんなの心を励ます歌手のために回っているのか。


俺はピラミッドで言えば底辺に住んでいる。

月手取り17万。朝から晩まで週5日で働いてこれ。

いいのか?
スポーツ選手は球遊びで見たことも無い大金を手に入れてるんだよ。


俺はなんで生まれてきたのか。あいつらの底辺になるために生まれてきたのか。


ちっとも幸せなんかじゃない。大学を卒業したあの日――。

正直死にたかった。


というか死んだ――。

割り切った。


俺はもういい。底辺。

あほな上司にコキ使われ年老いていくだけの人生。

もうちょっと悪あがきしたかったな。

そうだ、大学のとき友達と夢を語ったことがあったっけ。



宝くじあてて沖縄でのんびり暮らすとか。

笑っちゃうよな。金を得る手段が宝くじって。

もっと努力しとけって今いいたい。


なんでこんな状況になっちまったのか。
誰のせいでもない俺のせい。


高校が決まったとき近所の人の見る目が変わったのだが

薄汚い工場で働く今の俺には

「あの子は本当にがんばっててえらい子ね」

とか言われるんだ。


別にそんなこと言われるためにやってるんじゃない。

できれば辞めて自由気ままに生きたい。


それができる人間だったらこんな工場で働いてはいない――。


そして俺はこれから夢の無い人生をずっと生きていく――。



夢に向かって一歩踏み出せ!そう3年前の俺に一言言いたい。



いやーフィクションだけどリアル(ノ∀`)





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