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完全犯罪 第1部   byあくぼう

≪政治家の息子は政治家、医者の息子は医者……≫

後藤アクは小学生でありながらそんな社会の仕組みに気付いていた。

そして自分の親父がどんな仕事をやっているのか考えた。

塗装業だ。

会社から借りているトラック。ペンキや泥で汚れている。

そして何より汚れているのが親父だ。朝から晩まで一生懸命働いている。

それなのに自家用車は小さい車。別にそれが悪いというわけではない。

ただ・・・・・・アクは何か矛盾を感じざるにはいられなかった。

「もっと楽して良い生活をしている家族は五万とある」

そして思う、医者の息子は医者。そう考えたとき自分に置き換える。

「塗装業の息子は塗装業」

アクは小学生ながら親父と同じ職業にはなりたくなかった。

ペンキのニオイはするし毎日汗くさいからだ。

愛知県の田舎。

どこにでもある普通の家庭で育ったアク。

その『循環』を逆らいたい!と思いつつも小学生であったアクは何も出来ずにいた。


そんなアクが中学生になった。

ある日、家でゴロゴロしながらテレビをみていると……

その番組では3億円事件は犯人が見つかっていないということを言っていた。

「これだ……」と、アクは思った。これこそ完全犯罪。この日アクは、人生の目的を持った。

その日以降アクは完全犯罪をすることについていろいろ考えるようになった。

まず、体力がいるなと考えたアクは毎晩夜の8〜10時の2時間外を走るようになった。

それからアクは1人で完全犯罪は無理だと思い仲間がいるなと考えた。

そこでアクは閃いた。あいつなら仲間になってくれるだろう。

あいつとは、同じ中学の友達で名前は、けんた。けんたは頭が良い。

テストでは、毎回トップ3に入るぐらいの成績の持ち主だ。

けんたに相談してみようと思い翌日けんたを呼び出した。

けんた「なに?アクどうしたの?」

アク 「ああ・・・ちょっと相談あるんだけど」

アクは真面目な顔でそう言った。

けんた「真面目な話なら、今日俺の家で話そう」

アク「ああ、そのほうがいい。じゃあ今日授業終わったら校門で待ち合わせで」

けんた「ああ、待ってるよ」

その日の授業は勉強にならなかった。

そして、授業は終わり待ち合わせの校門へ走った。

すでにけんたがいた。
アク 「お待たせー。じゃあ行こう!」

――。

けんたの家に着いた。

2人は、けんたの部屋へ直行した。

けんた 「で、なに? 相談って?」

アク 「ああ・・・実は、俺、完全犯罪したいんだけど……どうかな?」

けんたは、あきれた顔で笑った。そして、

けんた「本気?」

アク 「本気だよ。だって俺、夢ないしさ。なんか面白そうじゃない?」

けんた「面白そうって……アクの方が面白いよ」

けんたはさらに続けた。

けんた「完全犯罪って、何するの? 強盗? 人殺し?」		

アク 「とりあえず、お金かな? けんたはどう? 一緒にやらない?」

けんたは、窓から日が沈んでいく空を見ながら言った。

けんた 「んーーーー。やろっか」

けんたは今まで親の言いなりのような生活で、
これからもずっとそうやって生きていくのかと心の底で思っていた。
恵まれ過ぎた生活が嫌だった。

アクは、心の中で、けんたがダメだと言ったら諦めようと思っていた。

しかし、けんたがやると言ったので、何かできるような自信が生まれた。

そしてその日は「だれにも内緒だよ」とアクが言い。
けんたも、「わかってる」と言ってその日は帰った。

――。

次の日。

けんた「そんなことよりさ、。いつ、完全犯罪やるの?」

アク「んー。具体的に、決めてないけど。多分、大人になってからだなぁ」

けんたは、ほっとした。

けんたは高校や大学生活を満喫したいと思っていたからだ。

1ヶ月ほど過ぎて学校で体力測定があった。

アクは毎日走って鍛えていたせいかクラスで1番足が速く短距離も長距離も学年トップだった。

けんたはというと体力は、平均並みだ。

けんたが1ヶ月で変わったことといえば、メガネをコンタクトにしたことだけだった。

そんな平凡な生活を楽しんでいた二人であったが彼らの心にはちゃんとした目的は消えてはいなかった。



さらに1ヶ月が過ぎた。 アクはけんたを誘って近所の空手道場へ行った。 アク「やっぱ、いざ警官と戦うときあったら、やっとかないとな……」 けんたは、「そうだな……」 見学していたがいつのまにか2人の姿は消えていた。 さらに1ヶ月が過ぎた。 アクは相変わらず毎日体を鍛えていた。 絶対役に立つと信じていたし、 何を始めるにしろ最初は基本的なことがしっかりしてないとダメだと思っていたからだ。 けんたは今まで通り頭が良く学年でトップの成績になったこともあった。 ある日、けんたはアクを学校で呼び出した。 そして、またけんたの家で話し合いをすることになった。 けんた「俺やっぱ、犯罪やめるよ」 アク 「急にどうした?」 けんた「やっぱさ、犯罪なんてやらないほうがいい」 けんたは、いつになく真剣な目でアクにそういった。 アクは、「わかったよ。他当たるよ」と、一言だけ言い帰ろうとした。 帰ろうとしたアクを見たけんたは けんた「諦める気は無さそうだな……。まだ本気で思っていたんだ?」 アクは立ち止まった。 けんたはアクが完全犯罪をやろうと言った日からそのことばかり真剣に考えていた。
けんた「そんなに本気なんだね。わかった。俺もやるよもう二度とやめるとか言わないから」 けんたは確認がしたかった。 人はそのときの感情に任せて行動や発言をしてしまうことがあるので時間が経ってから再度聞く必要があると思ったからだ。 アクはけんたの発言を聞いてさらにやる気になった。 それから2人は毎日遊ぶようになった。少しずつ計画も練っていた。 2人は深夜遅くまで計画を練る日も少なくなかった。 アク 「なんか計画練るって面白いな?」 けんた「だなー。俺なんて金の使い道まで、考えてるよ」 アク 「え? なにに使うの?」 けんた「まあ、いくら取れるかわからないけど。どっか、日本じゃない所で毎日平和に遊びたいな」 アク 「あぁ。日本だとなんか、怖いしなぁ」 2人は、完全犯罪が成功したかのように話した。 アク達は中2になった。上手いことに、2人は同じクラスになった。 アクには、2つ上の姉さんがいる。姉さんは市内でも有名な高校へ進学した。 アクは姉が中学からいなくなったことで中学で姉の目を気にせず生活できるようになった。 アクは、だんだん不良になっていった。 それは、ある出来事が引き金になった。 けんたは相変わらず頭が良かった。 アクを不良へさせた事件。それは一人の女子だ。 この女の名前は、姫野あき。 あきは、同じ学年で隣のクラスにいる。 あきは、スポーツ万能なアクに惚れていた。 ある日あきはアクをけんたに呼び出してもらい告白した。 あき 「ずっと前から好きす。付き合って下さい」 あきは、生まれて一番の勇気を振り絞ってアクに告白した。 だが、アクは残念ながら女子に興味がなかった。 アク「ごめん、俺他に好きな人がいるんだ」 アクは、他に好きな人なんていないのにそう言ってあきを振った。 あきは自分から告白したことが1度もなく他の男子からよく告白されていて自分でもかわいいと思っていた。 アクに振られたことであきはとても落ち込んだ。 アクは、完全犯罪をするために生活していた。 アクに彼女は必要ないものだった。 しかし、アクは今まで告白なんてされたことがなかった。 きっと完全犯罪をしようという目的で体力を付けるために毎日走っていたことが告白された要因の1つであろう。 あきを振った日の帰りけんたに呼び止められた。 そして、学校帰り近くの公園で話すことにした。 2人が向かった先は、青空公園。 ブランコや滑り台が全て青いのが特徴的だ。 青空公園は、アクの家とけんたの家の真中辺であきの家も近い距離にあった。 2人は、ブランコで話すことにした。 けんた「あきを振ったか、あきから聞いたよ」 アク 「俺、告白なんかされたことなかったし彼女いらないから振っただけだよ」 と言い。ブランコを揺らし始めた。 けんた「彼女いらなくても、作っとけば? あき結構かわいいし」 アク 「やだやだ。なんか、疲れそう」 けんた「じゃあさ、仲間にしようよ。女子も犯罪に加えればなにか役立つかもしれない」 アク「そだなー……。でもそれ言うの結構勇気いるよ?」 けんた「あきだって、勇気だして告白したんだから同じだろ?」 アク「それもそうだな」
2人はあきを仲間に誘うことにした。さっそくアクは次の日あきを呼び出した。 あきは、目がはれていて泣いた後のようだった。 アク 「昨日はごめん。俺ホントは他に好きな人いないんだ」 あきは、まだアクのことが心の底から好きだった。 あき 「じゃあ、付き合ってくれるの?」 アク 「いいよ」 あきは、アクに飛びついた。そこへ、けんたが通りかかった。 けんた 「なにこんなところで抱きついてるんだよ」 アク あき 「……。」 けんた 「まーいいや。そろそろチャイムなるよ」 3人は、次の授業のため、教室へ戻った。 アクは、初めて彼女ができたことにちょっと嬉しく思った。 そして、アクはもっとカッコよくなろうと思い始めた。 カッコよくなるとは、アクの中で不良になることだった。 先生に反抗することで周りから注目してもらい自分のカッコよさを周りにアピールするようになった。

ある日。アクは、あきと2人で学校から帰ることにした。 アク 「ちょっと話があるから、青空公園いこう」 あき 「うん。いいよ」 青空公園へ着いた。 周りには誰もいなかった。 アクとあきは、ブランコに乗って話すことにした。 アク 「実は俺……。」 あき 「どうしたの?」 アクは犯罪のことを言おうとしたがあきの目を見るとなぜか言えなかった。 アク 「あ、なんでもない。あきって将来の夢とかある?」 あき 「んー。学校の先生か、保母さんになりたいかな」 アク 「なんでなりたいの?」 あき 「私、子供好きだからー」
アク 「子供が好きかー、俺も嫌いじゃないんだけどな」 あき 「子供かわいいよねー?」 アク 「そうだねー」 アクは、あきを犯罪に加えることに何か罪悪感を感じた。 その日は、あきに犯罪を計画してることは言えなかった。 それから数日後、アクはけんたと2人で学校から帰ろうとすると後ろからあきがやってきた。 あき 「アクー。私も一緒に帰るー」 アク 「いいよー。帰えろ」 けんた「俺も彼女ほしいな……」



3人で青空公園で話すことにした。 けんたは会話の中で何気なく犯罪の話を出してみた。 けんた「あきさー、犯罪したことある? 万引きとか?」 あき 「そんなことするわけないじゃん」 あきはちょっと不機嫌になった。 アク 「女子って犯罪とかしないよなー。俺は小学生の時よく近くの駄菓子屋で菓子盗んでたけど」 けんた「俺もやったことあるよ。水下商店だろ?」 アク「そうそう、あそこのばあさんもう80過ぎててやりたい放題だったね」 けんた「俺なんか昔よく遊んでた”ユージ”と2人でよく買い物行ってた」

けんたは続けた。 けんた「ユージは、ムチャやるやつでさ最初は普通に菓子やジュース買ってたんだけどお金無くなるじゃん?  そうしたら万引きしようって言い出してさ」 アク 「まぁ、小学生の小遣いって1000円ぐらいだしね」 けんた「だからさ。菓子も食いたかったしやるしかなかった。でも誰にもバレてないぜ」 アク「俺はやってるときにばあさんの友達っぽいおじさんが来て見つかったんだよ」 アクは少し笑った。 けんた「あそこは、バレない方法があるんだ」


アク  「何々? どうやるの?」 けんた 「うんとね、あそこは、2人で買い物に行って一人がトイレ貸してくださいって トイレの場所教えてもらってる間にもう一人がカバンに菓子を詰め込むんだ。 でも一気に沢山盗むと怪しいからいろんな種類のやつをちょっとずつね」 アク 「へぇー。あそこでトイレ借りたことなかったなー」 けんた「ユージってそういう部分では俺より頭良かったなあ。でも、勉強は俺のほうが全然できてたけどねー」 アク 「へー。けんた頭いいからなー」 あき 「……。なに2人で盛り上がってんのよ」 あきは笑いながらそう言った。

けんた 「アクー。あとでちょっと話があるからあきを家まで送ったら俺ん家きて?」 アク 「わかった」 アクはけんたが何を言おうとしているのかちょっと分かっていた。 あき 「私そろそろ、帰るね。日も沈んじゃったし」 アク 「家まで送るよ」   そういって、3人は解散することになった。 アク達があきの家へ帰る途中。 あき「何、2人で企んでるの?」 アク「え? 何も企んでないよ?」 あき「嘘だー。なんかあやしいーんだけど」 アク「いやいや、何も無いって、俺を信じろ」



あき 「俺を信じろって言う人が一番信じれないんだよなぁ」 アク「……。そんなこと言われたって無いもんはない」 あき「まーいいけどさ。なんかあったらなんでも言ってね。私はアクの彼女なんだから」 アク「だから無いって。けんたが彼女欲しいって言ったら誰か紹介ぐらいしてやって」 アクは冗談そうにそう言った。 あき「はーい」 アク ≪女の勘って怖えー≫  あきの家へ着いた。 あき 「送ってくれてありがとう。またねー」 アク「おう。またなー」 アクは、けんたの家へ向かう途中、交差点に乗り捨ててあった自転車をみつけた。 アク 「なんだ、まだ新しいじゃねーか。まあいいや」 アクは、後輪のチューブを緩め。空気を抜いた。 「シュー!!!」



アク 「はー。やっぱこれストレス解消に良いな」 アクは、乗り捨ててある自転車を見つけるとタイヤの空気を抜くという習慣がついていた。 しばらく歩くとアクは、けんたの家へ着いた。けんたは家の前で待っていた。 けんた 「よう。遅かったじゃん」 アク 「あぁ。ちょっと自転車の空気抜いて遊んでたから」 けんた 「アクも変わったな。なんかユージに似てきた」 アク 「そういえばユージって人は、今どこにいるの?」 けんた「ん? あいつは俺と小学校同じで中学上がる時に引越した。引っ越したって言ってもすぐ近くだけどね」 アク 「あれ、確かあきも同じ小学校だよな?」



けんた 「そうだよ。」 アク「じゃあ前から仲よかったの?」 けんた「いや。あいつとは中1の時同じクラスになったけど、それまではそこまで仲良くなかったな」 アク「そっかー」 けんた 「まぁ、とりあえず、部屋行こう?」 アク 「あぁ。行こう」 アク達はけんたの部屋へ行った。 けんた「ところで、あきに犯罪するって言った?」 アク 「言えるわけないだろ。なんかあいつ、犯罪しなくても毎日楽しそうだし」 けんた「そっかぁ。特にあきみたいなタイプは犯罪なんてする必要は無さそうだ」

アクはしばらく頭を下に向けて考えた。

アク「俺、別れよっかな?」 けんた「え?」 アク 「だって俺、あきはいいやつだと思うけど、犯罪しないんだったら意味ないし。時間の無駄だ」 けんた「いやいや、一応付き合っとけってとりあえず」 アク 「でも、あいつ、なんかうすうす俺らを怪しんでるぞ?」 けんた「えぇ? 怪しむって犯罪するなんて思ってないと思うぞ」 アク 「そうだけど。このままだとなんかバレそうで怖い」 けんた「んー。でもまあ、まだ付き合っとこうぜ」 アク「けんたがそう言うならわかったよ。まだ別れない」 けんた「別れるときは、俺にちゃんと相談してから別れろよ。 んで、これからも今まで通り普通に付き合え。少しでも別れたいみたいな空気だすと、 ややこしいことになるから」


アク 「わかったよ。ところでさ話変わるけどユージって奴も誘ってみようよ?」 けんた「んー。あいつかー。仲間になれば、頼りになると思うけどー」 アク「けんたが言うなら間違いないな。よし! 誘おう。仲間は多いほうが良いって」 けんた「わかったよ。今度会ったとき言っとく」 アク 「じゃあ、俺そろそろ帰るわ!」 けんた「あぁ、また学校でな」 アクは、けんたの家を出て自宅へ戻った。 けんたの家からアクの家まで約30分。 そのちょうど真ん中に青空公園がある。 アクは、帰り道、青空公園のベンチに座って、空を眺めた。 「あれー? アク? 一人で何してるの?」



あきが犬を連れてやってきた。 アク「あ? あき、犬の散歩か?」  あき「うん。ネコの散歩にみえる?」 あきは笑顔でそういった。 アク「……」 すこし、変な空気になった……。 アク「もう、帰るんだろ?」 あき「うん」 アク「家まで送るよ」 あき「うん! 今日、2回目だね」 あきは嬉しそうに微笑んだ。 アク「おう。俺に連絡くれれば、何回でも送ってやるよ」 あき「ほんとー?」


アク「ほんと、ほんと」 あき「なんか、最近、見た目が怖そうになってきたけど中身は前のまんまなんだね?」 アク「前のまんまって?」 あき「やさしーってこと」 アク「ふーん。自分ではよくわからんなー」 アク達は、あきの家へ向かいながら話していた。 すると、アクがけんたの家へ行くとき、自転車のタイヤの空気を抜いた交差点へ出た。 アク ≪あの自転車どうなったかな≫ アクは少し自転車のことを気にしていた。 アク ≪あ……誰かいる!≫ 同じぐらいの歳の少年が自転車のそばで困ったそうにしている。 そしてアクは違う道に行くのもあきに変だと思われるので仕方なく自転車の近くを通りかかった。 あき 「あれ? もしかしてユージ君?」



ユージ「お? あ! あき?」 あき「やっぱりユージ君だ。久しぶりー」 ユージ「おうー。お?隣の人は彼氏さんか?」 あき「うん!わかる?」 ユージ「そりゃもうお似合いのカップルですよ」 あき「ありがとー、ほら、アク挨拶して」 アク「……初めましてー。後藤アクです」 ユージ「初めましてー。見た目と違って真面目そうだな」 アク≪あはは……。空気抜いたの俺なのに……≫ アク「いやいや……」 あきは、自転車の空気が抜けているのに気付いた。 あき「あれ? それユージ君の自転車? 空気抜けてるよ?」  


ユージ「うん。俺の自転車。まぁ……昨日学校でパクったんだけどね」 ユージは得意げにそう言った。 あき「えー。ユージ君の中学って隣の偉川(いがわ)中学でしょ?」 ユージ「そうだよ。確かあきって、すぐそこの友合(ともごう)中学だったっけ?」 あき 「うん。ユージ君も引越ししなかったら一緒に行けたのにー」 ユージ「あはは。親に言ってくれー」 あき 「って自転車盗んじゃだめだよ。盗まれたコ可愛そう」 ユージ「あきは、相変わらずだな」 ユージとあきは、アクが思っていた以上に仲が良かった。 アク「ねーねーユージ君?」 ユージ「あ? ユージでいいよ。 俺が告っても付き合ってくれなかったあきと付き合ってるんだもん。なんか尊敬しちゃうな」 アク「ああ……そうなんだ。俺のことも気軽にアクって呼んでいいよ」



ユージ「わかった」 アク「ところでさ、なんでこんな所に自転車置いてたの?」 ユージ「すぐそこのゲーセンで遊ぶために」 アク「だったらゲーセンの駐輪場に置けばいいじゃないか?」 ユージ「だって、あそこの駐輪所。自転車パクられるってよく聞くし、いたずらもされるから止めたくないんだ」 アク「でも、なんで交差点?」 ユージ「だって……。 ここだと車の運転手から見れるから、そう簡単にカギぶっこわして持っていくやついないでしょ?」 アク「あぁ……そっか。でもパンクしてない?」 アクは人事のように言った。 ユージ「う……うん。誰がこんなことしたんだろう……。 まぁ、高校生とか大人がやる訳ないし、俺等と同じ中学生の確率が高いかな」 アク≪あは……正解……≫ ユージ「でも、チューブとか、捨てられてないから、また空気入れれば直るからいいよ。 あ!そうだ。あきん家近くだろ? 空気入れさせてよ?」 あきは、チラっとアクの顔を見た。アクは優しそうな顔でうなずいた。

あき「あ……いいよ」 ユージ「あ! 忘れてた! 俺今から先輩と遊ぶんだった」 あき「じゃあ急がないと!」 ユージ「でもまぁ、いっか♪」 あき「だめだよー。早く行かないと怒られちゃうよ?」 ユージ「慣れてるから大丈夫♪でもその先輩1個上なんだけど俺らの学校では悪くて有名」 あき「えぇ……ホントに大丈夫?」 ユージ「大丈夫だって。俺には優しいから」 アク「これからなにして遊ぶの?」 ユージ「んー。いつもは、ゲーセンに行くねー」 アク「またゲーセンかー」 アクは笑った。 ユージ「だって、ゲーセンって行っても俺はただでやってるしねー」

あき「え? どういうこと?」 ユージ「あぁ。その先輩の知り合いがそこでバイトしてるから。 まぁ、やりたい放題だね。でも、カメラあるからカメラに注意してやってるんだけど」 あき「相変わらずユージ君は、無茶が好きだねー」 ユージ「はははっ。俺にとっては全然無茶の内に入らないけどね」 3人と1匹は、そんな会話をしながらあきの家へ向かった。 ユージ「あ? そういえばけんた元気?」 あき「元気だよ」 ユージ「あいつは、相変わらず頭いいの?」 あき「うん。この前のテストでも学年トップだったよ」 ユージ「すげーな、トップかぁ。俺は、ドベ争いだ」 あき「ユージ君も、勉強したら絶対みんなよりいい成績とれると思うよ?」 ユージ「そんなことないって、」


そうこうしているうちにあきの家へついた。 あきママ「あきー遅いじゃない。心配したわよ」 あき「あーごめんなさい」 あきママ「あ! 誰? そのコ達は?!」 あき「あー。こっちの人は彼氏のアクでこっちの人はユージ君だよ?」 あきママ「あぁ。あの引越ししたコ?」 あき「そうそう」 アク ユージ「どうもー。初めましてー」 あきママ「なに二人して、声合わせて言ってるのよ」 あきの母親は思わず笑った。 アク ユージ「あ……すいません」 あき 「あははー。また揃ってる」 あきママ「あははっ。面白そうな二人じゃない。よかったらご飯食べていく?」


ユージ「あ、いえ。これから用事あるんで俺は失礼します」 アク「あ、俺も家に飯あると思うんで帰ります」 あきママ「あらそう。ならいいわ。また今度ね」 ユージは、あきから空気入れを借りて空気を入れた。 ユージ「よし! じゃ、俺先に行くわ」 アク「ばいばーい」 あき「またねー」 ユージ「またぁー」 ユージは、急いであきの家を後にした。 アク「じゃ俺も帰るわー」

あき「わかったぁ。また明日学校で」 アク「じゃねー」 アクはユージを見て是非仲間にしたいと思った。 見た目はアクよりすこし悪そうだったけどユージを仲間にすることで完全犯罪が上手く行くような気がしたからだ。 アク ≪しかし、ユージに、悪いことしたなぁ、まさかあればユージの自転車だったなんて≫ アクは少し反省した。 それから1週間経った。 学校でアクはけんたにユージと会ったことを聞かれた。


アク「うん。あったよ。たしか1週間ぐらい前」 けんた「そっかぁ。昨日、ユージに偶然会ってさ、いろいろ話たんだけど、ユージも仲間に入るってさ」 アク「そっかぁ。これで3人目か。まだまだ少ないなぁ」 けんた「まだまだ、これから高校行ってたくさんつくればいいだけのこと、焦る必要ないよ」 アクはけんたの言葉でいつも勇気付けられる。 けんた「てことで、明日ぐらい3人で話さない?」 アク 「わかった。けんたの家でいいんだろ?」 けんた「ああ、いいよ」


次の日。アクとけんたの二人で学校から帰っているとき後ろからユージが自転車でやってきた。 ユージ「よーアクー。1週間ぶりだなー」 アク「そうだねー。その自転車あれから何もされてない?」 ユージ「あー。されてないよ」 けんた「ユージもきたことだし、はやく帰ろう」 3人は、急いでけんたの家へ向かった。 ユージ「おー久しぶりだ」 けんた「そうだね。昔はよく俺の家で遊んでたね」 けんたとユージは昔の思い出を少し話した。

ユージ「ところでさー」 アク 「ん?」 ユージ「仲間になるって例えばどういうことするの?」 けんた「んー。今は特に何もすることないよ」 ユージ「ん? どういうこと?」 けんた「んとね」  けんたは、ユージに犯罪の内容を話した。 その内容とは、銀行強盗のことで、アク達が金を取りに行くとき、そこの銀行の社員の人と警察が仲間であるというものだった。 ユージ「それ成功すると思う?」 アク「だって全員仲間なんだぜ? 上手く行くさ」 ユージ「それだったらさ、銀行強盗じゃなくてパチンコ屋の集金してる車を襲ったほうがバレにくいと思うよ」

けんた「そっちのほうが楽かもな。だって、相手も仲間なんだから、手渡すだけでいいし」 ユージ「でも、それだったらバレちゃうから仲間だろうとナイフとかで軽く傷つけたほがいいな」 けんた「そうか」 アク「なんにせよ、仲間がいるな」 ユージ「うん。最低10人ぐらいいたらいいかもね」 けんた「でも、10人もいたら分け前が減るね」 アク「俺は、成功さえすればいいと思ってるよ」 けんた「なんで?」 アク「俺、正直金はそこまでほしくないんだ。ただ、完全犯罪ってのをやってみたいだけ。自己満かもしれない」 ユージ「あはは。自己満かー。まぁ、今はまだ中学生だからいいかもしれんけど、 大人になったら金、金、言うぞきっと。」 アク「そうかなー」



3人の話は、夜まで続いた。 ユージ「俺さ、犯罪に興味あるんだよね。 っていうか、人と同じことするのが嫌いでさ。俺こういうの好きだから仲間になるよ」 アク「ありがと。ユージで3人目だ」 ユージ「まだ3人かー。あきは、入れないの? 女いた方が、もうちょっと柔軟な考えも出るかもしれない」 アク「あきは、入れようと思ったんだけどなんかあいつの人生壊したくないんだ」 ユージ「壊すって……。それは、あきが決めることだよ。まぁ、俺もあきにはちょっと犯罪してほしくないな」 けんた「俺もやっぱ、あきには犯罪はしてほしくないや」 3人は、あきを仲間に入れないことで合意した。 ――。 それから数ヶ月が経ちアク達は、中3になった。 アクは、中2のときと比べものにならないほど不良になったいた。 アクの日課は部活荒らし。 毎日違う部活へ行っては遊んでいた。 アクのお気に入りは卓球とバトミントンだ。 アク「中3は面白いなー。うざい先輩がいないからなー」 アクは、こんなことをいつも言っていた。 しかし、アクはそこらへんの不良と違って軽く勉強していた。 それは、けんたとあきの影響が多きかった。 アクとあきは、まだ付き合っていた。



けんたは、特に変わった様子は無かった。 あきは、高校受験に向けて必死に勉強してた。 あきは、アクの姉のいる高校へ進学するつもりだった。 ユージは、ろくに学校も行かず、毎日ゲーセンで遊んでいた。 アクとけんたとあきはそれぞれ別々のクラスになった。 ――。 5月のある日。 アクはけんたに呼ばれけんたの家で話すことになった。 けんた「ごめん、アク」 アク「どうした?」 けんた「俺、来年、フランスに引っ越すんだ」 アクは一瞬止まった。 アク「え? マジ? なんで?」 けんた「俺の親父の関係で、まだよくわからないけど……悪い」 アク「いや。いいよ。犯罪は大人になってからだし。まぁ、一緒に高校生活を過ごせないことは残念だけど」 けんた「俺さ、英語上手くなって帰ってくるよ。フランス語もかなー。 そして、日本人だけじゃなくて外人も仲間に入れた方が上手く行く気がするんだ」 アク「おぉ。それもそうだな。ユージには言ったの?」 けんた「いや、昨日親父から聞かされたばかりだからまだ誰にも言ってない。それに、まだ先のことだから」 アク「そっかぁ。まぁ、とりあえず凄いやつだよけんたは」

けんた「そんなことないって」 アク「じゃあ、これから残りの中学生活楽しむかぁー」 けんた「おーう。ところで、アクは勉強してる?」 アク「え? 一応してるよ。だって俺高校行くし」 けんた「あきと同じ高校?」 アク「いや、あいつは頭いいから、違うとこ行くよ」 けんた「そっかぁ、ユージは相当頭悪いから、みんなバラバラだなー」 アク「なに寂しいこと言ってんだよ」 けんた「あーわるい。わるい」 アク「俺、けんたがいなかったら毎日テキトウに生きてて体も鍛えることなく勉強もしないで毎日ボーっと過ごしてたと思う。 けんたには、感謝してる」


けんた「なに、言ってんの? らしくないよ」 そうけんたは笑いそうになりながら言った。 アク「あーわるい。わるい」 ――。 それから2週間が経った。 アクは、先生にひどく叱られ、部活荒らしをやめた。 6月のとある日曜日。 ユージに誘われアクとけんたは、ユージと3人で遊ぶことになった。 アク「ユージ、久しぶりー。」 ユージ「おー。久しぶり。なぁ、アク良いバイトあるんだけどやらない?」 ユージはすこし得意気に言った。

アク「ん? なになに?」 けんた「え? 俺は?」 ユージ「同時に質問するなー」 アク「俺の質問が先ー」 ユージ「んー。けんたのほうが先だな」 けんた「お?」 ユージ「けんたは、俺の中で手を汚しちゃいけないんだ」 けんた「は?」 ユージ「俺の中でけんたは、人生の汚点をしちゃいけなんだ。だから、ダーメ」 アク「……ってことは、俺は汚点してもいいんだ」 ユージ「うん! なんかアクは俺と同じにおいがするし」 アク「で、バイトの内容ってなに?」


ユージ「アク、スロットやったことある?」 アク「え? ないよ。だってまだ中学生だし」 ユージ「そっかぁー」 アク「ユージはしたことあるの?」 ユージ「あ、あるよ。先輩と一緒に行って教えてもらった」 アク「それとバイトってなんか関係あるの?」 ユージ「ああ・・・。実はスロットには、『サクラ』って呼ばれるのがあってさ。 それをやらないか?っていわれたんだ」 アク「へー。それって儲かるの?」 ユージ「うん。一日3万だって」 アク けんた「すごー」 ユージ「で、やるの? やらないの?」
アク「んー。スロットかぁー」 アクは難しい顔で考えている。 けんた「え! こんなおいしい話ないぞー?」 ユージ「うんー。俺やってたけど、正直楽だったよ」 アク 「楽って?」 ユージ「だって、ただ座ってスロットやってるだけだし」 アク 「あー。そうか」 けんた「それって絶対バレないの?」 ユージ「まず、バレないね。店側と組んでるわけだし」 けんた「一回やってみれば?」 ユージ「あ!一つだけ、大変なことがあるよ」 アク 「え?」 ユージ「朝はやいこと。俺と同じで、アクいつも寝坊でしょ?」 けんた「何時に開店するの?」 ユージ「店は9時からだけど。そうだなー。8時には行かないと危ないかも」 アク「8時ならなんとかなる。危ないって?」 ユージ「まぁ、裏口から入るから並ぶ必要ないけど、はやめにいかないと、店長に怒られるぞ」 アク「そっかぁ」 ユージ「うん。朝9時から始めて夜の7時ぐらいまで、打つんだ」 アク「結構、大変そうだね」 ユージ「でも、トイレとか行っていいし、普通に飯食っていいから。 てきとーに10分ぐらいうろうろしてても問題ない」 アク「それって、バレたらどうなるの?」 ユージ「バレたことないからわからんけど。 たぶん、店側の責任だからやってるほうがたいした罰もないと思う」 アク「ふーん」 けんた「将来、完全犯罪やろうって思ってる人間が、こんなことできないでどうするの?」 アク「あははー。それもそうだな。普通の客のフリしてればいいんだしね」 ユージ「じゃあやる?」 アク「とりあえず1回だけね」 ユージ「わかった。とりあえず1回って言っとくよ。やる日決まったらまた教えるよ」 アク「わかった」 ユージ「俺の用件はこれだけだ。さてと、帰るかな」 けんた「ちょっと待って」 ユージ「ん? どうした?」 けんた「アクには、もう言ったんだけどさ。俺、来年フランスに引っ越すんだ」 ユージ「おー。すげー。確かけんたの親父さん、よく外国いってたもんな」 けんた「うん。んでさ、まだアクにも言ってないんだけど、話しておきたいことがあるんだ」 アク 「?」 けんた「んと、俺引っ越した後さ、この家使っていいよ」 アク「え? マジで?」 けんた「うん。家族全員引っ越すから、誰もいないし。 この家は、日本に夏休みとか遊びに帰ってきたとき使いたいから」   ユージ「え? でも、両親はいいっていったの?」 けんた「俺が頼んだんだ。そしたら、掃除しといれくれれば問題ないって」 アク「おー。じゃあここが俺らの秘密基地みたいなもんだね」 ユージ「そうだね、アジトだ」 けんた「でも、家の中はからっぽになるから、自分達でいろいろ買ってね」 アク「あはは、それは問題ないって」 ユージ「じゃあ俺も住もうかなー?」 けんた「それもいい!」 アク「俺、最近自分の家いるの嫌でさー。一人になりたかったんだー」 けんた「つっても、まだまだ先のことだけどね。来年の話だよ」 アク「うん、まあそうだね」 ユージ「サクラで稼いでここで暮らすかー」 けんた「でも、汚さないでね。それだけ守ってくれないと」 ユージ「わかってるって」 アク「なんだか、来年が楽しみだー!」 けんた「俺いないし……」 アク「ユージは、高校行くの?」 けんた「行くよね?」 ユージ「それなんだけどさ……聞いてくれる?」



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